新緑の季節に訪れたい穴場の城ランキング 3位は江戸城、2位は鳥取城、1位は?
新緑の季節に映える山頂の石垣
相変わらずブームが続く各地の城をめぐるのに、ふさわしい季節を迎えている。桜の季節は人でごった返すし、夏の猛暑下の城めぐりもきつい。新緑のなか穏やかな気候のもと、心地よく歩けるこれからの季節が、城と緑のマッチングを考えても一番相応しいように思う。では、どこの城に行くか。見応えがある穴場の10カ所を順位とともにお届けしたい。
第10位は掛川城(静岡県掛川市)。もともと今川氏の城で、永禄12年(1569)、ここに逃げ込んだ今川氏真を徳川家康が包囲した史実はよく知られる。天正18年(1590)の豊臣秀吉による小田原征伐後、山内一豊が整備した。
嘉永7年(1854)の地震で倒壊後に再建された二の丸御殿と太鼓櫓が現存する。とくに藩主の邸宅で政庁でもあった御殿がこの規模で残る例は、ほかに二条城しかなく貴重である。加えて幕末に倒壊し、平成5年(1993)に復元された天守は、木造による本格復元の嚆矢だ。元来の場所から50メートルほど北ではあるが、平成7年(1995)に大手門も復元されている。
御殿から天守を望み、天守から御殿を見下ろせる城は、いまでは掛川城だけ。一方、中世以来の十露盤堀や三日月堀なども発掘、復元されている。中世から幕末までの歴史を、整備された城域のなかで体感でき、見どころが多いわりには比較的空いていて、じっくりと鑑賞できる。
第9位は津和野城(島根県津和野町)。標高362メートルの霊亀山の山頂部に展開するこの城は、鎌倉時代からの歴史があるが、関ケ原合戦後の慶長6年(1601)に入封した坂崎成盛が近世城郭へと大改修した。
山頂近くまでリフトで登ることができ、山頂部は北方に独立した出丸と、本丸、二の丸、三の丸などで構成される主郭に分かれる。いずれの曲輪も急峻な崖上に築かれながら、石垣でしっかりと固められて壮観だ。石垣の周囲は山麓からも城跡がよく見えるように、樹木が適度に伐採されている。このため新緑の季節には映える。
最高所から見下ろす城下町は、赤茶色の石州瓦の家並みが美しく、その景色をさだまさしが「案山子」という歌の歌詞に読んでいる。山頂には建物は現存しないが、山麓にあった藩主の居館の周囲には、二つの櫓も残る。
新幹線の駅から至近距離に充実の城郭
第8位は福山城(広島県福山市)。掛川城も新幹線の駅から近いが、福山城は駅の真ん前で、ホームから城を見渡せる。西国の大名を監視する目的で元和8年(1622)に完成した城で、戦前まで天守も残っていたが、終戦間近の昭和20年(1945)8月9日、空襲で焼失してしまった。
昭和41年(1966)、鉄筋コンクリート造で再建されたが、戦前の姿と印象がかなり違っていた。復興天守は真っ白だったが、戦前の写真を見ると窓枠や格子は黒っぽい。銅版が巻かれていたのだ。また、北面は防御性を高めるため、4階まで前面に鉄板が貼られて真っ黒で、最上階も窓の形状や位置も異なっていた。それが、令和4年(2022)の築城400年を機に改修され、全国で唯一だった鉄板張りをふくめ、戦前に近い姿を取り戻した。
伏見城から移築されたと伝わる伏見櫓や筋鉄御門も現存するなど、天守以外にも見どころが多い。これほど新幹線の駅から至近で価値が高く、混雑せず鑑賞しやすい城はない。鉄板張りの黒い天守は新緑に囲まれた時期がとりわけ美しい。
第7位は大洲城(愛媛県大洲市)。淡路島の洲本から移った脇坂保治が整備した城で、そのころ建てられたと思われる4重の天守は、明治21年(1888)まで残っていた。そのため古写真が多く残り、天守の規模や構造を伝える木製の模型(天守雛形)や絵図もあった。それらをもとに、往時の姿を伝統工法で正確に再現した復元天守が平成16年(2004)に完成した。
この天守は高さ19.15メートルで、木造で復元された天守で最大だ。また、天守の西側に連結されている台所櫓と、北側に連結されている高欄櫓は、ともに現存しており、天守と一緒に内部も鑑賞できる。この城も、場所柄か人でごった返すことはなく、いつもゆったりと鑑賞できる。また、天然の堀でもあった肱川対岸から眺める雄姿は、新緑の季節が一番美しい。
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