常に“命の危険”と隣り合わせ…高層ビル「窓ガラス清掃員」が強風や酷暑以上に“危険”と感じる「高所平気症」とは

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 原稿の締切に頭を抱えていたある休日の昼前、同じように切羽詰まった働き手が集まる高層オフィスビル内のコワーキングオフィスへ向かったところ、ビルの入口に完全フル装備の作業員たちが集まっていた。

 体に頑丈なハーネスを巻き付け、足元のバケツや掃除道具、相当の長さがありそうなロープを1つ1つ指をさしながら確認している。

「高所窓ガラス清掃員」だ。

 筆者は普段から、ブルーカラーの作業員たちが仕事をしている現場に出くわすと、周囲の邪魔にならないところで足をとめ、ロックオンしてしまう。時には「暑いですね」「ご苦労様です」などと声を掛け、軽い会話を交わしながら彼らの作業内容や現場の雰囲気を聞き出すこともあるのだが、そうした会話が毎度叶わない職業が、この高所窓清掃員たちだ。

 彼らの定位置は常に我々の「頭上」。その作業現場に遭遇しても、いつも高いところにいるため声が掛けられないのだ。

 その日、ようやく「地上」で捕まえた彼らから感じたのは、「安全」に対する真剣な向き合い方だった。

 今回はその時に出会った彼らと、他6名の作業員・経営者からの話をもとにまとめてみた。

窓清掃の種類

 高所窓清掃員の作業方法は、ビルの構造や階数などの条件によって変わってくる。

 最も一般的なのは、屋上からロープを垂らしブランコを取り付けて作業する「ロープワーク」で、主に5~10階建てのビルの窓ガラスを清掃する際によく使われる。大がかりな機材などを設置する必要がないため、比較的費用も安い。

 一方、超高層ビルなどでは、備え付けられている「ゴンドラ」を使用して作業することが多い。ブランコよりも安定感があり、複数人で一気に作業できるため効率はいいが、ゴンドラの安全確認に時間がかかるという側面もある。

 そのほか、吹き抜けなど他の清掃方法が向かない場所でも作業がしやすい「足場」を組む方法や、複雑な構造のビルでも作業ができ、重い清掃道具も上げられる「高所作業車」を使用する方法などがある。

 先述通り、どの方法を選ぶのかは状況次第だが、とにかく安全にできることが最優先。ある現役作業員はこう話す。

「無理な姿勢・体勢にならないことが一番重要です。そこからバランスを崩せば即落下事故に繋がりますから」

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