「アベノミクスで1000億円儲けた“ウォール街の殺し屋”」 トランプ関税で日本を待ち受けるベッセント財務長官の正体

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世界三大投資家に師事

 米国の名門「アイビーリーグ」の一角を占めるイェール大学を卒業したベッセント氏は、1984年に世界三大投資家の一人であるジム・ロジャーズ氏に師事し、投資家の道を歩み始めた。

「ベッセント氏についてロジャーズ氏に聞いたところ、“とにかく頭の回転が速く、すぐに仕事を覚えた”と話していました」

 とは、国際ジャーナリストの大野和基氏である。

「サマー・インターンだったベッセント氏は、お金がなかったらしく、マンハッタンにあるロジャーズ氏のアパートに泊まっていたとか。当初はジャーナリストを志していましたが、ロジャーズ氏の下で働くうちに投資の面白さに気付いたそうです」(同)

 日本のバブル崩壊後の91年、ベッセント氏は師匠の紹介で大物投資家ジョージ・ソロス氏のファンドに入社。翌年には外国為替市場でポンド売りを仕掛け、英国のイングランド銀行を破綻寸前にまで追い込む。

1000億円超を儲けた“伝説”

 かような実績が認められ、2011年にソロス氏のファンドで最高投資責任者に就任した。13年には日本市場を舞台に、1000億円超を儲けた“伝説”が語り草となっている。

「アベノミクスで日本が円安になることをいち早く予想したベッセント氏は、日本への投資を積極的に行って巨額の富を得ました。“日銀を打ち負かした男”と評されて、元金融庁長官の森信親氏やイェール大名誉教授・浜田宏一氏らとのパイプを持つ親日家としても知られています」(大野氏)

 15年にヘッジファンド「キー・スクエア・グループ」を立ち上げるなど、名立たる億万長者でもあるベッセント氏は、どんな姿勢で日米交渉に挑むのか。

 再び大野氏に聞くと、

「親日家だからといって、日本に甘くしてくれるわけではありませんからね。トランプ政権で国防次官に任命されたエルブリッジ・コルビー氏は、幼少期を日本で過ごした親日家ですが、石破政権に対して防衛費増額を要求しています」

 実際、ベッセント氏は投資家の血が騒ぐのか、トランプ氏に共感する姿勢を示している。2月22日付の「フィナンシャル・タイムズ・オンライン」では、トランプ氏の「取引的なアプローチ」を全面的に支持する論説を発表したのだ。

「ベッセント氏は、トランプ政権の高官として初めてウクライナに乗り込み、ゼレンスキー大統領と面会しています。米国が安全保障を提供する代わりに、ウクライナへはレアアースを求めたのです。同様に日本も交渉の場では『引き換えになるモノ』を準備する必要があると思います」(同)

 後編【安倍政権事務方の責任者が明かす「トランプとのディールの必勝法」 日本が切れる二つのカードとは】では、今後米政府と交渉する際に日本側が切れる「二つのカード」について詳報する。

週刊新潮 2025年4月24日号掲載

特集「予測不能なトランプに石破官邸は脆弱すぎる 不安だらけの日米関税交渉」より

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