「アベノミクスで1000億円儲けた“ウォール街の殺し屋”」 トランプ関税で日本を待ち受けるベッセント財務長官の正体
「日本が列の先頭にいる」
【全2回(前編/後編)の前編】
かつて日本には国難を交渉力で突破したつわものがいた。「不平等条約」解消で関税自主権を奪還した小村寿太郎。戦後の主権回復を成した「サンフランシスコ講和条約」では、吉田茂の懐刀として白洲次郎が尽力した。翻って、あまりに心もとない“赤澤使節団”を待ち受けるのは、トランプ大統領の腹心たち。日本の命運を左右する交渉相手の正体とは。
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相互関税の解消を求めて、米国と交渉を望んでいる国の数は75カ国を超えた。
その中でも真っ先に手を挙げた国の動向に、世界中の注目が集まっている。
「日本が列の先頭にいる。彼らは交渉チームを派遣する予定なので、様子を見てみよう」
そう語ったのは、米財務長官のスコット・ベッセント氏(62)。日米関税交渉の責任者として、トランプ氏から指名された重要閣僚だ。同じく責任者に選ばれたのは、米通商代表部(USTR)代表のジェミソン・グリア氏(44)である。
この二人、実は日本と浅からぬ縁を持つという。
「このままだと交渉が決裂すると……」
「グリア氏は、第1次トランプ政権で日米貿易交渉をやった際、ロバート・ライトハイザー通商代表の首席補佐官を務めました。米国側ナンバーツーとして、常に通商代表の隣に座っていました」
そう振り返るのは、2019年の安倍政権下で結ばれた「日米貿易協定」の舞台裏を知る関西学院大学教授・渋谷和久氏。当時の肩書は内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官だった。
「交渉はライトハイザー氏と茂木敏充大臣との間で行われましたが、私は事務方の責任者として、グリア氏がカウンターパートだった。ライトハイザー氏は80年代から日米交渉をやってきた方で、コワモテで言い方もきつい。対する茂木大臣もしっかり言い返すので、常に緊張感が漂う険悪な雰囲気となり、まったく話が進まないこともありました。このままだと交渉が決裂すると何度思ったことか」(同)
そこで渋谷氏は、グリア氏と密かに連絡を取り合い、打開策を模索したという。
「グリア氏は頭の良い方で非常にバランスが取れていました。無理難題を押し付けてくることもなく、調整がしやすかったですね。私が何かを提案すると、すぐ意図を理解して“それはいいね”“その条件はのめない”と即答してくれました。交渉がまとまらないと、トランプ大統領が怒るわけですからね。さらにライトハイザー氏も感情的な人ですぐブチ切れる。グリア氏は“ウチのボスはいつもこうです”と言っていました」(同)
グリア氏が来日した際は、宿泊先のホテルで朝食を共にしたこともあったとして、渋谷氏はこう続ける。
「当時、グリア氏には小学生ぐらいの息子さんが何人かいらっしゃって、野球好きだと言っていました。それで“読売巨人軍の帽子をお土産に買ったんだ”って、すごく喜んでいました」
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