映画界はすっかり「邦高洋低」が定着…「名探偵コナン」歴代1位スタートの陰で“ハリウッド俳優”来日も激減した洋画のさみしすぎる現状

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邦画の巻き返し

「邦画は興収76.5億円のジブリアニメ『ゲド戦記』を筆頭に、『LIMIT OF LOVE 海猿』、(05年12月公開で統計が06年の)『男たちの大和/YAMATO』など、興収50億円超えが7本。また、いずれもロングランの劇場版シリーズ『ポケットモンスター』『ドラえもん』『名探偵コナン』など、同30億円超えが4本と活況でした」(配給会社関係者))

 対する洋画は、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」と「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」がいずれも100億円超え、「ダ・ヴィンチ・コード」も90億円超えだったものの、50億円超えは5本。10~20億円台にとどまった作品が多く、トータルでは邦画が上回った。

「『ゲド戦記』は、出せば必ず当たったジブリ作品。『海猿』は、伊藤英明主演のフジテレビ系でヒットしたドラマの初の劇場版。『大和』は終戦60周年記念作として、東映と映画界に一時代を築いた角川春樹氏の協力タッグでプロモーション活動に力を入れ、作品のクオリティーも高く、ヒットにつながりました」(前出・関係者)

 08年以後は、公開本数と興収ともに邦画が洋画を上回り続け、本数・興収のシェアは6:4前後で推移していた。しかし、20年にコロナ禍の影響でハリウッドでの製作がストップしていた時期もあり、洋画の割合は7:3~8:2まで落ち込んでしまった。

「懐かしい話ですが、20年ほど前は、特に外資系映画会社は予算が潤沢だったので、トム、ブラピ、WWEのトップレスラーから俳優に転向し“世界一稼ぐ男”となったドウェイン・ジョンソンらのインタビュー取材のため、各媒体の記者を海外に連れて行っていました。しかし、最近はそんな取材も、スターたちが来日することもほぼなくなりました。今年では、ボブ・ディランの半生を描いた2月公開の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』に主演のティモシー・シャラメがジャパンプレミアで来日。イベントは盛り上がりましたが、映画のヒットにはつながりませんでした。最初からヒットの見込みがないと判断すると、配給元は宣伝費をかけません。主演のスターや監督らを海外から呼んでイベントを行うこともなくなるでしょう。結果、ますます洋画の興収減に拍車をかけることになります」(映画専門誌編集者)

洋画ファンは配信へ

 コロナ禍以降に公開された洋画のヒット作は「トップガン」続編以外では、世界的人気ゲームを映画化し興収140.2億円の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(23年)、人気シリーズ最新作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」(同)の63.2億円が目立つぐらい。

 一方、邦画は国内の最高興収となる404.3億円を記録した「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(20年)を筆頭に、劇場版を重ねる度に興収を伸ばしている「名探偵コナン」シリーズやジブリ作品、そして劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」(22年)の164.8億円など、アニメ作品が快進撃を続けている。

 実写では山崎賢人主演で、これも人気コミックの実写版「キングダム 大将軍の帰還」(24年)が80.3億円。米の「第96回アカデミー賞」で邦画・アジア映画史上初の視覚効果賞を受賞したゴジラシリーズの最新作「ゴジラ-1.0」(23年)が76.5億円を記録した。

 昨年の公開本数は、統計以来過去最高となる19年の689本に次ぐ685本を記録し、洋画も年々増え続け505本の計1190本。興収も邦画が過去最高の1558億円を記録。対する洋画は511.8億円。ほぼトリプルスコアだった。なぜ、ここまで日本で洋画の動員が落ち込んでしまったのだろうか。

「思い返せば、『ジョーズ』、『E.T.』、『ゴーストバスターズ』、『ターミネーター』などは、家族そろって何も考えずにただ楽しめる作品でした。さらに、ホラー好きな人は『13日の金曜日』シリーズ、SFもホラーも好きな人は『エイリアン』シリーズなど、それぞれにハマるジャンルがありました。ところが最近は、『スター・ウォーズ』シリーズやディズニーにアニメなど、観客層が絞り込まれてしまう作品が多い。また、Netflixなど動画配信サービスのオリジナル作品の方が多種多様なので、映画を見るよりもそちらで楽しむ人が増えました」(前出・専門誌編集者)

 相変わらず、ハリウッドの製作費は飛び抜けている。だが、それをうまく切り盛りしてヒット作を生み出したジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、ジェームズ・キャメロンといった、才能あふれるクリエイターの後継者がなかなか現れない現状もあるという。

「日本で絶大な知名度を誇る、新たなハリウッドスターも現れていません。日本でのプロモーションが縮小してしまったことにもそれは大きく関係しています。また、米の『アカデミー賞』受賞作品も、大衆娯楽的ではなく主義主張のある作品がメインになり、日本ではあまりヒットしなくなりました。今後、海外の作品を日本で流行らせようと思ったら、真田広之さんのように、日本に縁の深い俳優がかかわっている作品を逆輸入するのがベストではないでしょうか」(前出・映画担当記者)

デイリー新潮編集部

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