「刺さらないなぁ」「核がないんだよね」…新入社員に教えたい“とにかく企画にダメ出しするオジサン”を黙らせる唯一の方法

ライフ

  • ブックマーク

「権威主義ファースト」の邪魔くささ

 冒頭の企画書の話に戻るのだが、私が仮にこの企画書をリライトし、自分でプレスリリースを書いたとしよう。するとこの人物はさらにダメ出しをしてくると思われる。カネをもらってプレスリリースを書くのが仕事なだけに、勝手に自分の聖域を汚されたと思うのだろうし、改善された企画書にも文句を言うだろう。

 だが、この手の人物は権威に弱い。私が会社員だった時代、下っ端PRプランナーとしてプレスリリースを会議に提出した。するとその場にいた営業担当とマーケティング担当が徹底的にダメ出しをしたのだ。私は彼らが言うがままに黙って聞いていたのだが、ダメ出しがあらかた終わったところでこうひと言だけ言った。

「これ、私が書いたプレスリリースをTさんが全部チェックし、加筆修正して今日の会議に提出するようGOを出したものなんですが」

 Tさんは、PR業界の大重鎮である。私のこの一言に対し、彼らは「あぁ……、そうなんだね……。TさんがOK出しているんだったらこれでいいと思う」「私も同感です」となった。

 実にくだらないやり取りではないか。権威主義ファーストで仕事をする人間がいかに邪魔な存在か、というのがこの時よく分かった。以来、私は自分が書いた企画書やプレスリリースも「これ、Tさんが全部チェックしてくれたものを持ってきました」と嘘を言うことにした。そうするとダメ出しは極端に減ったのである。

 結局世の中は「何を言うかよりも誰が言うか」の方が重要だということを齢24にして学んだのであった。それなので、散々理不尽なダメ出しをされる方は、「こんちくしょー! 私だってエラくなってやる!」という反骨心と向上心をもって仕事をしてください。いずれ、リベンジすることができます。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。