「殺人クマ」の胃袋から被害者のタイツが…「秋田八幡平クマ牧場事件」 檻から脱出「ヒグマ6頭」が、2名の老女を襲った惨劇の一部始終
ヒグマの胃から…
時は流れて平成の世。いまだ根雪の残る秋田県北東部、鹿角市で「三毛別事件」を彷彿とさせる惨劇が起こった。「秋田八幡平クマ牧場」から6頭のヒグマが逃げ出し、田中ハナさん(仮名=75)と田中シゲさん(同=69)が犠牲になったのだ。2人はいずれも牧場従業員で、苗字は同一だが姉妹ではない。「三毛別事件」は野生のヒグマによるもので、今回は牧場で「管理されていたヒグマ」という違いは確かにある。しかし、両事件は、はっきりと1つの事実を示している。荒れ狂うヒグマの前では、人間があまりに非力な存在でしかないという事実を。事件の2日後、射殺されたヒグマが解体され、それぞれの胃袋が取り出された。その内容物を前に、人々は慄然とする他なかった。
「やっぱり、警察は熊の解体なんてやったことないし、腹破ってもどれが胃だか分かんねから、俺ら猟友会に依頼したんだべ」
とは、鹿角市猟友会のA氏(75)。解体には、同猟友会の会員8名が立ち会ったという。会員の1人が刃渡り12センチほどの包丁でヒグマの腹を裂くと、“ブシュー”という音がしてガスが噴き出してきた。
ある猟友会員は、
「風下にいた人は皆エズいてた。胃袋を取り出した後、内容物を警察の人がビニール袋に移していった。その中に、人の肉があった。牛とか馬と同じで、ちょっとくすんだ赤色だ。あそこにいた熊が生肉を餌にしていたことはないから、あれは人の肉だ。大きさは握り拳くらい。それがゴロゴロ出てきた。胃液で黄色っぽく変色したタイツもあった」
同じく解体現場に立ち会った別の会員は、ヒグマの胃から人間の髪の毛が取り出されるのを見たという。
「新聞紙片面くらいの大きさの胃からは、毛だけではなく、人間の皮膚も出てきた。被害者が身につけていた肌着の片袖の部分だけが出てきたのには驚いたよ」
冒頭で引用した『羆嵐』と同様、被害者は〈羆の胃に送りこまれ〉ていた。しかも、それから時をおかずに射殺されたため、消化されないまま胃中に残されていたのであろう。惨劇は如何にして起こったのか。ここで、ヒグマ解体の約48時間前、事件発生時まで時計の針を巻き戻す。
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