「また行きたい」けど「二度とゴメン」愛憎の大阪万博 感動したのは砂と寿司

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 4月13日に開幕した大阪万博をめぐっては、早速、様々な情報があふれかえっている。消費経済アナリストの渡辺広明氏は、開幕2日目に会場を訪れた。これを読んで万博に行きたくなるか、行きたくなくなるか……。リアルな現地レポート。

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 のっけからクレームで申し訳ないのだが、とにかく「万博アプリ」がだめだった。インターフェースが悪すぎるし、地図は小さく扱いにくく、パビリオン予約のやり方も迷う。入場前など通信が不安定になることもしばしばあった。筆者はもともとスマホアプリの扱いが得意ではないが、それを差し引いても、もう二度とこのアプリとは関わりたくないと思ったほどだ。ただ、こうした不具合も、きっと日本人の底力によって、数週間もすれば改善されていくだろう。実際、万博そのものは想像以上に楽しく、費用の都合さえつけば、またぜひ訪れたいと思える体験だった。

 初日の入場が大混雑だったというニュースを見ていたので、混雑を覚悟しつつ、9時の入場予約に対して8時半に東ゲートに向かった。空港のような荷物検査を経て、QRコードでの入場が完了したのは9時20分ごろ。比較的スムーズで、ストレスはほとんど感じなかった。ただし、夏の炎天下での来場を想定するなら、帽子や日傘は必携だろう。

思わず3,000円のお土産を買ってしまった

 事前に航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんに勧めてもらった、アメリカ、ヨルダン、ルクセンブルクのパビリオンを巡ってみた。

 筆者は57歳。「兼高かおる世界の旅」で小さい頃からアメリカ文化が頭に刷り込まれている。同じ世代にとってはアメリカパビリオンはなかなか楽しかった。ロケットに乗る擬似体験や巨大スクリーンで大谷翔平の映像が観られたりと、東ゲートから最も近い海外パビリオンという事もあり、最初に行くのにはベストな選択だった。

 ヨルダンパビリオンはスペースこそ小さいものの、現地の砂漠の砂を検疫のハードルを越えて日本に持ち込み、その上に座って神秘的な映像を鑑賞できた。かなり工夫がされた展示で、足の裏のサラサラした砂の冷たい感覚が記憶に残る、素晴らしい体験だった。節約しなければならない懐事情なのに、砂のアートのお土産(3,000円)を買ってしまった。

 ルクセンブルクのパビリオンは、筆者のような人生では知ることはなかったであろう、ヨーロッパ中央西部の国についての勉強になった。公用語は自国語とフランス語とドイツ語の3つで、神奈川県とほぼ同じ広さ。そこに暮らす国民は約65万人でその多くが複数の言語を話せるバイリンガルだという。多様性を持ち合わせている事が分かった。言語というテーマについて改めて考えるきっかけになった。

 ほか、インドネシアやサウジアラビア、複数の国が出展する共用パビリオンなども回り、様々な価値観に触れる事ができた。今の時代、YouTubeやSNSで外国の情報を得ることは簡単だが、158の国や地域からやってきた人々に直接会い、話を聞ける機会は万博以外にほとんど存在しない。非常に貴重な体験ができたと思う。

 ただしオープンに間に合わなかったパビリオンが5つ以上あり、筆者が楽しみにしていたインドやブラジルも2日目の時点で未完成。ネパールもオープンしていなかった。

 それらのパビリオンの警備員に聞いてみても、いつ開くかは分からないとの答えばかり。またあるパビリオンの関係者によれば、初日にはオープンしていないにもかかわらずアプリ上で当日予約をとれてしまい、約600人の来場者が次々と来場。スタッフが謝罪に追われ、大変だったという話も聞いた。

 筆者のように、交通費と宿泊費をかけて首都圏など遠方から訪れた者にとって、人手不足や資材不足による工期の遅れは「仕方ない」とは簡単に割り切れない。商業施設とは違い、すべてが整っている前提で入場料を取っている以上、有耶無耶にすべき問題ではないと思う。

 各パビリオンの工期管理を万博がどう把握していたかは分からないが、すべて完成するスケジュールで行程を組んでいれば、事前PRもしっかりでき、前売りチケットはもっと売れ、販売目標の1,400万枚に対し70%の約970万枚しか売れていないなんて事態にはならなかったのではないか。

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