「日本は軍事的にある程度自立するべき」 世界は第2次世界大戦と同じシナリオをたどるのか… 専門家が警鐘

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“鎖国”とも例えられる関税政策

 第1次世界大戦後、資本主義は世界恐慌という挫折を味わいました。貧富の差が拡大し、多くの人々が生活に行き詰ったのです。

 結果、主要各国はブロック経済と呼ばれる排他的な貿易政策に走り、次なる大戦の一因になりました。

 トランプ氏の主な支持者である白人中間層も、長らく給与が伸びず、経済的な鬱屈を抱えています。

 それを受けて「自国産業を守る」と閉鎖的な関税政策を取った流れは、まさにブロック経済までの歴史に準(なぞら)えることができるのです。

 また、4年前の米議事堂襲撃事件も、大戦前に議会制民主主義が機能不全に陥った、ドイツなどの国があったことを想起させます。

 さらに、今回の“鎖国”とも例えられる関税政策で、アメリカは軍事だけでなく、経済面でも世界の主役から降りてしまいました。

軍事的にある程度の自立が求められる

 リーダーが不在となった世界は、G7やG20といったまとまりを欠く「G0(ゼロ)」と呼ばれる状態に突入するといわれています。

 まさに群雄割拠の時代で、アメリカに替わり新しい秩序をつくろうと、戦争に踏み切る国があっても不思議ではありません。

 日本は、各国が分断された「G0」世界で、これまでの親米・グローバル経済偏重の姿勢を改める必要に迫られます。アメリカの庇護下にいれば安心という時代は終わり、軍事的にも経済的にも、ある程度の自立が求められるでしょう。

 今後、防衛費や核武装のあり方まで見直されるかもしれません。国家という財布が一つである以上、社会保障制度などの改革も合わせた議論が絶対に必要です。

 来たる「G0」時代に向けて、アメリカから軸足を移すという大転換ができるかどうか。政治家たちの胆力が試される時が来ています。

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先崎彰容 日本大学危機管理学部教授

週刊新潮 2025年4月17日号掲載

特集「狂気のトランプ関税 私はこう考える」より

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