「トランプ氏を批判する学者はまるで理解できていない」と佐藤優氏が語る理由 「トランプ関税は大歓迎」

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「ロシアから積極的に学ぼうとしている」

 トランプ氏がそうした考えを採用するようになったのは、米国をはじめとした西側諸国がウクライナ戦争で“敗北”しつつある現実が背景にあります。

 開戦当初、国際政治学者やジャーナリストたちは、ウクライナ戦争が長引けばロシア経済は崩壊すると語っていましたが、実際はどうでしょうか。ロシアは2014年のクリミア併合以降、西側諸国から経済制裁を受けてきた。結果、11年かけて事実上の「アウタルキー」、すなわち外国との金融・貿易取引を必要としない「閉鎖経済」への転換に成功したのです。今や、ロシアは経済崩壊が進むどころかその軍需産業は強靭さを増しています。トランプ氏は、そんなロシアに積極的に学ぼうとしているのではないでしょうか。

「もろ手を挙げてトランプ関税を歓迎」

 では、日本は今後どうしていけばいいのか。すでに決定的なパラダイムシフトが起きてしまったと認識して、日本も早急に自国だけでモノを作れる産業構造への転換を目指すべきでしょう。例を挙げればマスクです。今でこそ、国内のメーカーがマスクを大量に生産するようになりましたが、これはコロナ禍で世界的にマスクの需要が高まり、海外からの輸入がストップしてしまったから。安全保障上、必要に迫られてマスクを国内で生産するようになったわけです。

 すでに現代は「新帝国主義」の時代に突入しています。かつての帝国主義時代との相違点は、帝国主義時代では世界大戦にまで発展する一方、「新帝国主義時代」においては核兵器の抑止力があるために、戦争はウクライナ戦争のように局地戦にとどまる傾向にある。

 こうした事情を踏まえても、日本はそろそろ、グローバリゼーションの幻想から目を覚ます時でしょう。安くても農薬たっぷりな農作物を食べる代わりに、値段は張っても、安全な国産品を食べる。そうやって、日本国内でお金を回したほうがいいじゃないですか。

 私は率直に言えば、もろ手を挙げて今回のトランプ関税を歓迎しています。

 後編【「家電、食料品に衣類まで…」 アメリカで起きている「買いだめラッシュ」の実態 NY在住ジャーナリストが語る】では、トランプ関税を受け、アメリカで起こっている「買いだめラッシュ」の実態についてレポートする。

佐藤 優 作家

週刊新潮 2025年4月17日号掲載

特集「狂気のトランプ関税 私はこう考える」より

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