惜しくも引退…“球界最後の武闘派”中島宏之の名場面&乱闘シーン!「無名の公立校」からプロ入り、同じ立場の球児にエールを贈る姿も

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 “ナカジ”の愛称で親しまれた前中日・中島宏之がシーズン開幕直前の3月27日、自身のSNSで現役引退を発表した。ドラフト5位で入団した西武を振り出しに、米球界挑戦を経て、オリックス、巨人、中日で計24年間プレーし、通算1928安打、209本塁打、995打点を記録。その一方で、近年では数少ない“武闘派”としても名を馳せた。そんなナカジのファンの記憶に残る名場面や乱闘シーンを振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

 ***

“怒りパフォーマンス”が呼んだ日本シリーズでの勝利

 最も印象深いのは、西武時代の2008年の日本シリーズである。

 同年の中島は、シーズンでは楽天・リックと最後まで首位打者を争い、初タイトルの最高出塁率(.410)を獲得。クライマックス・シリーズ第2ステージでも、日本ハムとの第1戦で先制ソロを含む2打席連続弾を放つなど、4年ぶりの日本シリーズ進出に貢献した。

 日本シリーズの相手は巨人。6年前に4タテを食った西武としては雪辱戦になる。中島は第1戦の6回に上原浩治から値千金の決勝ソロ。第2戦は2対3で敗れたものの、4回に高橋尚成から逆転2ランを放った。

 そして、1勝2敗と負けが先行し、必勝を期した第4戦で、中島は乱闘劇の主役となる。

 西武が1対0とリードの4回、先頭打者として巨人の先発・グライシンガーから左肘に死球を受けたことがきっかけだった。中島がグライシンガーを睨みつけながら一塁に向かうと、グライシンガーも「(内角球を避けず)当たって出塁することを選んだのに、なぜ睨むのか」と怒声を上げながら歩み寄っていく。

「向こうは英語で何を言っているかわからない」と首を捻った中島だったが、グライシンガーが怒りの表情で近づいて来るのを見て、「カーッとなった」。両者は互いに距離を詰め、戦闘モードに入る。だが、間に入ったチームメイトに引き離され、バトルは寸前で回避された。

 結果的にこの騒動は、西武を利することになる。次打者・中村剛也は平常心を失ったグライシンガーから試合を決める2ランを放ち、2勝2敗のタイに戻した。試合後、中島も「作戦勝ちでしたね」と“怒りパフォーマンス”が呼んだ勝利にニンマリだった。

 3勝3敗で迎えた第7戦でも、中島は勝利のキーマンとなる。1点を追う8回、西武は先頭の片岡易之が死球で出塁後、二盗と犠打で三進し、1死三塁で中島に打順が回ってきた。

 第5戦で左脇腹を痛めながら、強行出場していた中島だったが、状態は悪く、外野フライを打てるかどうかもわからなかった。

 西武ベンチのサインは、ギャンブルスタートだった。中島は気力を振り絞って、越智大佑の初球を三塁前にボテボテのゴロを転がし、片岡が同点のホームイン。この執念の一打が直後、平尾博嗣の決勝タイムリーを呼び込み、2004年以来4年ぶりの日本一を手にした。

次ページ:「オリックスはしょうもないチーム」

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。