“デジタル万博”の会場でなぜスマホが不通なのか…「大阪・関西万博」の貧弱すぎる通信環境をITジャーナリストが分析
開幕初日の4月13日から様々なトラブルが露呈した「大阪・関西万博」。“並ばない万博”のはずが長蛇の列、“デジタル万博”のはずがスマホは繋がらない――。なぜそんなことになってしまったのか。そして、半年の開催期間中に改善の余地はあるのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞いた。
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【実際の写真】酷評ばかりの「大阪万博」で“唯一のおすすめスポット”は?
井上氏:実は1970年の「大阪万博」にも行っているんです。もちろん子供でしたからそんなに鮮明な記憶ではないのですが、“太陽の塔”は圧倒的でした。また、会場と直結する万国博中央口駅(北大阪急行電鉄)には自動券売機がズラーッと並び、もう一つの最寄り駅・北千里駅(阪急千里線)なんて世界初の自動改札が導入され、子供心に未来を感じさせてくれました。あれから55年が経って大阪・関西万博が開催され、大行列を作ってスタッフが一生懸命に荷物チェックしたり、QRコードが読めなくて困っていたりするのを目の当たりにして、日本のITは何も進歩していなかったのかと愕然としました。
――大阪・関西万博は開幕初日(4月13日)から様々なトラブルが露呈した。
井上氏:それを受けて、石毛博行・万博事務総長が発表したコメントに問題の本質があるように思いました。
――石毛事務総長は、開幕初日に入場ゲートで長い行列ができたことなどについて「運営が不慣れで生じている課題だ」と発言した。
井上氏:私は会社員時代、それも入社早々に販促イベントを任されたことがありました。もちろん右も左も分かりませんから、電通の下請会社にいたことがある先輩にイベントのやり方について教えを請うたんです。
動線とオペレーション
井上氏:すると「一番大事なのは客をきちんと回遊させて混乱を防ぐこと」だと。「そのためには動線の設計、各スタッフが何をどうやるかというオペレーションが重要なので、詳細にガッチリ組み上げろ。そこが曖昧になるとスタッフも何をやればいいのかわからないし、お客さんもどこをどう行けばいいのかわからなくなってしまう。そして混乱を招きそうなポイントには仕事ができるスタッフを置いて、お前は会場の混乱だけを見ておけ」と言われたんです。この時のことを思い出すと、もちろん規模は全く異なりますが、大阪・関西万博は逆のことをやっていると言わざるを得ません。
――具体的にはどこがまずいのだろう。
井上氏:まず、会場の最寄り駅である地下鉄・夢洲駅には大勢の警備員が配置されているものの、それぞれが拡声器で大声を出しているものだから何を言っているのか分からない。反響した音で気分が悪くなった人までいたそうです。これはテストランの時にも聞かれたことでした。
――テストランとは開幕前に会場のオペレーションを確認するために試験的に運営するもので、大阪・関西万博会場では4月5日と6日の両日にわたって行われた。
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