“デジタル万博”の会場でなぜスマホが不通なのか…「大阪・関西万博」の貧弱すぎる通信環境をITジャーナリストが分析

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テストランの意味がなかった

井上氏:テストランで判明したことが開幕初日に改善できていなかったわけです。長蛇の列も同様です。長時間、並ばされることになったら、今どきの人はスマホを取り出して動画を見たりゲームをしたりするのは当たり前です。他にすることもないのですから。大勢が一斉にスマホを使い始めたため通信が不安定になり、入場に必要なQRコードが読み込めなくなった。警備員は「動画視聴をやめてください」と呼びかけたわけですが、これもテストランの時に少なからずの人がゲームをやっていたそうで、事前にわかっていたこと。課題としてピックアップできはずなんです。その時点で通信会社に連絡して移動通信基地を持ってきてもらうことができていれば、開幕初日のトラブルはかなりなくせたはずです。

――それが石毛事務総長の「運営が不慣れ」に繋がるわけだ。

井上氏:この言葉って、自分ではない誰かの責任みたいな言い方ですよ。言い逃れしたい政治家のようで、トップが一番言ってはいけないセリフです。「運営が不慣れ」って、それじゃあ今まで何をやっていたのかと思わざるを得ません。これほど大規模なイベントで、開幕後、動線や運営スタッフのミスは一番やってはならないことで、それを解消していくのが主催である万博協会のはずです。

――開幕初日は雨で、雨宿りに追われた観客も多かった。

“おもてなし”からほど遠い

井上氏:石毛事務総長は「雨宿りの場所の確保など、できることは進めたい」とは発言しつつも「ぜひ雨がっぱを持ってきていただくなどの対策をお勧めしたい」と言っています。日本の6月と7月は必ず雨が降りますし、8月と9月、閉幕する10月だって近年は猛暑、酷暑になり、ゲリラ豪雨の可能性だってある。観客は予約制なので、週間天気予報を見て雨が降らない日を選ぶでしょう。となれば、雨の日はガラガラ、晴れた日に客が集中し、また通信は不安定に。夏は夏で熱中症になる人も出るでしょうが、救急車は道が混んでいては入れません……という想定が簡単にできるわけですが、それすらトラブル・シューティングしていないのではないかと不安になります。

――それでも“デジタル万博”である。公式ホームページには《先端デジタル技術を用いて、未来を先取りする“超スマート会場”を実現します》と明記されている。

井上氏:入場時にQRコードも読み取れないようで、どこが最先端なのでしょう。会場内は全てキャッシュレスで、クレジットカードや電子マネーしか使えない。チャージ式デジタルウォレットの“ミャクペ!”には有効期限(2026年1月13日まで)があり、残高の払い戻しもできない。もちろんフードコートも現金不可で、席の予約代は1人550円、予約がなければ水のサービスすらない。夏の酷暑の中で適切な対応なのか、人道的に見ても酷い話です。団体で訪れた外国人などが暴れるようなことだって起きるかもしれません。おもてなしの心からはほど遠いですし、なんですかね、温かみがないんです。

――会場内のデジタルマップが使いにくいため、紙の地図(200円)を求めて2時間も並ぶという本末転倒の光景もあった。

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