韓国で「嫌中」がすごいことになっている 相次ぐスパイ行為&デモ工作疑惑…“北朝鮮並み”の扱いに

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金銭で情報を流した軍人が逮捕

 こんな前例もある。2021年12月に大きく報じられたのは、ソウル・蚕室(チャムシル)付近を流れる漢江に停泊していた大型船舶内の中華料理店が、中国政府が極秘に設置した「秘密警察署」ではないかという疑惑だ。店舗オーナーとされる中国人は起訴され、現在も裁判は進行中である。

 彼らがスパイだとして、何を狙っているのだろう。3月末にも済州島で中国人が逮捕され、その情報が4月になって公開された。彼は韓国軍人の協力を得て、米韓連合訓練に関する最高機密資料を国軍のイントラネットから入手していた。この一件では、情報の見返りに金銭を得たとされる軍人も逮捕された。警察は、中国人に指示を出していた人物――スパイ活動の大本の特定を急いでいる。

 昨年12月に尹大統領が非常戒厳を発令した理由のひとつに「中国人によるスパイ行為と思しき事案が相次いでいる」ことがあった。これらを「軍事基地保護法違反」からより重い刑罰が科される「スパイ防止法」によって処罰すべきだとする与党提案に、野党「共に民主党」が反対していることにも、尹大統領は言及していた。

弾劾デモに中国人の姿が

 もうひとつ、韓国内での中国人の“活動”が物議を醸した。昨年12月4日に非常戒厳が発令されて以降、韓国国内でデモや集会が繰り返し行われてきたのはご存じのとおり。そこで「中国人による弾劾デモ参加」をめぐる議論が社会的な関心を集めたのだ。

 発端はSNSで浮上した“中国籍の韓国滞在者が野党寄りの立場でデモに参加し、弾劾賛成派を扇動しているのではないか?”という投稿だった。これが拡散されると、実際に一中国人が弾劾賛成集会に参加していたことが確認され、さらに中国国籍の人物が韓国の警察官の制服を着て反対派の集会に現れ、参加者を制止しようとしていた疑惑も持ち上がった。

 デモに参加する中国人が注目されたことで、本国としても無視できなかったのだろう。今年1月に駐韓中国大使館は「政治活動への関与を控えるように」、韓国国内に居住する中国人に対して通知を出した。「韓国の法律では、外国人が政治活動に参加することは禁止されており、違反した場合は国外退去処分を受ける可能性がある」と自国民に警告したのである。

 しかし効果は限定的で、弾劾関連の集会で中国人の姿はたびたび目撃されている。4月初めにも、駐韓中国大使館は政治集会への参加を自制するよう再び通知していた。デモへの参加、それも弾劾賛成に偏った動きには、世論誘導の意図が透けて見える。あくまで個人が自分の意志による行為と言えるのかどうかが問題だが……。

 こうした中国人の行動に、当然ながら弾劾反対派の韓国人の間では強い反発が生まれた。その結果、反対派の集会では「弾劾反対」とともに「中国共産党反対」とのスローガンも掲げられるようになった。1月末には駐韓中国大使館や中国人学校があるソウル・明洞(ミョンドン)を中心に「中国共産党に反対する」「中国人による韓国政治への介入を許すな」と訴えるデモが行われた。以降、こうした動きは続き、中国人観光客との間でトラブルが生じる場面もあったという。

 いまのところ外交問題には発展してはいないものの、大統領罷免の審判が下された4月4日には、駐韓中国大使館が明洞の中国人学校に休校を指示した。中国側は警戒を示している。

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