「公立王国埼玉」でもカズレーザーの母校の人気が低下…私立への流れが加速する高校無償化で公立校が戦々恐々

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 新年度、高校無償化により教育の何が変わるのか――。公立王国と言われる埼玉県では県立浦和高校を筆頭に、公立優位の状況が続くと見られる。それでも上位校の一部や中堅校では大きな変化が起こりそうだ。公立校の校長らが戦々恐々としているその実態とは。【小山美香/教育ライター】
(前後編の後編)

公立上位校でも人気に陰りが出ている学校も

 県内では公立上位校でも安心できる状況にない学校もある。

「タレントのカズレーザーさんの出身校でもある熊谷高校は、地域トップの伝統校ですが、県北部では上位層が早稲田本庄に流れ、人気が低下しています」(県南東部で、30年以上小中学生を教える塾講師のBさんの塾講師Bさん)

 今年の入試は倍率1.05となっていて、浦高の1.43、大宮高校(理数科)の2.10などに大きく水をあけられている。

「川越地区では、川越女子の人気が低下し、共学の川越南のほうに人気が流れています」(川越地区で塾を経営するCさん)

 中堅以下では、さらに公立から私立へ流入するのでは、とCさんは予想する。

「私立の『確約』(模試などの成績によって試験前に合格の確約をもらう埼玉県独特の制度)には併願と単願があり、第一志望の単願にすれば、秋頃には受験が実質終わります。勉強したくない層は、授業料も無償化なら、そちらに流れていくでしょう」

 Bさんは、

「私立の確約は粉飾決算のようなものです。相談会で学校側が偏差値をいくつといえば、それが基準になってしまいますから」

 学校側が要求する成績水準が実際の偏差値より高ければ、より優秀な生徒を集めることができる。単願なら偏差値が少し低くても確約を出し、潜在能力の高い生徒を確保。入学後に勉強漬けにし、大学合格実績を出して、さらに偏差値をあげていくという手法だ。

 さらに、

「その手法で、高校に新たに偏差値を少し高く設定した特選コースを設置して、そのコースの偏差値がこの10年で20以上上がった学校もあります」(同)

 と訝る。

 また、部活動に力を入れ、スポーツ推薦で強い生徒を集められる私立も、人気が高まりそうだ。県南東部に住む会社役員のAさんも「基本は公立が第一志望ですが、無償化なら、ダンスを習っている子供にはダンスが強い私立も選択肢になります」と話す。

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