「公立王国埼玉」でもカズレーザーの母校の人気が低下…私立への流れが加速する高校無償化で公立校が戦々恐々

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無償化をきっかけに教育の抜本的な改革へ

 この状況に「公立高校の校長たちは戦々恐々としています」と話すのは、前さいたま市教育委員会教育長で、文部科学省学校DX戦略アドバイザーなどを務める細田眞由美氏だ。

 細田氏は、世界基準のカリキュラムである国際バカロレアを導入したさいたま市立大宮国際中等教育学校を創設、さいたま市立大宮北高では理数科を設置し、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール指定校となり人気をあげるなど(今年の入試倍率は2.23)、 公立校で数々の改革を行ってきた。

 細田氏は

「無償化で公立と私立が切磋琢磨し、より質の高い教育活動が提供できること、そして教育の機会均等になることは、誰が見てもよいことです。公立はもっとチャレンジングな改革ができるはずです。埼玉県内の私立は後発の学校が多いので、青田買いして大学合格実績を伸ばすことに注力していますが、第一志望にしてもらえるような本質的な教育改革ができるかどうか、というところに今後がかかっていると思います」

 と話す。一方で、

「経営基盤や入試科目数なども全く違う公立と私立が競うのは、無理な話です。公立の多くは校舎が老朽化しています。国が校舎の建て替えなど施設の充実のために、自治体の財政をバックアップする必要がありますし、例えば公立も、私立と同様、複数校受験できるように するなど、同じ土俵で競い合うための入試改革をする必要もあります」

 と訴える。

 また無償化で私立の一部に生徒が流れることは、「受験科目の少ないことや、私立単願で中3の秋で勉強から離れてしまうことになりかねないことは、教育の質の低下を招きます」と危惧する。

長い伝統に甘んじてはいけない

 とはいえ、公立校にも危機感を持ってほしい、とこう力説する。

「公立に長い伝統があったとしてもそれに甘んじてはいけません。大学受験だけを考えた古い価値観の教育では、今の生徒や親の求めるものに呼応しているとはいえません。受験だけを意識した暗記重視の教育にしがみつく時代はとうに終わっています。21世紀後半から22世紀にかけて生きる生徒たちに必要な教育、どのような今日的な学びを提供するか、そこから目をそらしてはいけないと思います」

 2027年には東大で新学部が創設され、入試方法も従来とは違うものになると発表されている。各大学で総合型選抜入試の割合が増加し、日本の教育自体が変わりつつある。

「大宮国際中等では、いわゆる受験指導は行わず、英語と日本語で探究的な学びをしっかりしています。すると、自然に生徒の希望した進路を実現できるのです」

 今春、第1期生が卒業し、東大、京大、一橋、東京科学大に合格者を出したほか、海外大にも多数の合格を出した。

 無償化により公立の統廃合や私立の値上げなど、さまざまな懸念が囁かれる。これをきっかけに私立も公立も教育の質を向上するため、抜本的な改革ができるかどうかが生き残りの鍵になるだろう。

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 前編『高校無償化でも“公立王国埼玉”は名門「浦高」強し! 私立の人気が上がらない独特の受験システム「確約」の意外な実態』では高校無償化でも県立浦和高校をはじめとした名門校の人気が揺るがない理由、私立高受験の独特なシステム「確約」の秘密に迫っている。

小山美香(こやま・みか)
大学時代からフリーライターに。大学卒業後は「サンデー毎日」(毎日新聞出版)の編集記者を経て、フリーランスに転身。中学受験情報サイトでのべ180校以上の私立中学校高等学校を取材したほか、現在は不登校や通信制高校、子ども食堂など、子どもをめぐる事象について取材・執筆。著書に『中学受験をして本当によかったのか? ~10年後に後悔しない親の心得』(実務教育出版)がある。

デイリー新潮編集部

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