ブリに日本酒… アメリカで大人気の日本食材、生産者から悲鳴 「恩義があるので、値下げを飲まざるを得ない」

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「伸びシロがあり、魅力的な市場だった」

 同じ水産品でも、米国人が好む鮮魚はヘルシーな脂がのったブリだとか。農水省の最新統計によれば、輸出されるブリのうち約6割が米国向けだった。

 その一大産地といえば、魚類養殖生産量で45年連続1位を誇る愛媛県。豊かな漁場を抱える宇和島市に本社を置く水産会社「イヨスイ」に尋ねると、

「米国への輸出は13~14年前から始めていますが、売り上げは毎年15%くらい複利で伸びていました。安定して伸びシロがあり、おまけに免税でしたから魅力的な市場でした。すしなど和食の普及もあって消費が増えていたのですが、最近はグリルなどより幅広い調理でもブリを使い始めてもらっていました。今回の相互関税は困りますし、ダメージもあると思っています。私共のお客様には韓国やフィリピン、インドネシア、ベトナムの方もいる。米国経済に依存する国は多く、景気が悪くなれば、そちらへの輸出も落ちるかもしれないと心配しています」

「ブリの養殖は2年かかるので、生産調整は簡単ではない」

 実はトランプ関税を見越して、米国の取引先から“早めに売ってほしい”との問い合わせが殺到。前年の5割増しの注文を受けたそうだが、在庫や保管場所の関係から、全てに対応するのは困難だったという。

「ブリの養殖は稚魚から2年かけて育てます。すでに来年分の生産は始まっているので、関税や消費の冷え込みを考慮して、生産量を調整することは簡単ではありません。米国からの注文が減れば他国へ売るしかありませんが、世界全体で消費が落ち込めば対応するのはより難しくなってしまいます」(「イヨスイ」)

 自然相手の商売ゆえ、生産調整が容易な工業製品とは対処の仕方も大いに異なるというのだ。

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