「フィル・ミケルソン」が自然体でプロ生活を続けられる理由は“家庭優先”の人生観 「娘の卒業式のために全米オープンを欠場したことも」(小林信也)

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ツアーより家庭

 ゴルフ界で稀有(けう)な活躍を続けるミケルソンは、当然、他の選手とは違う独特のスイングや哲学を持って実践している。

 スイングはダイナミックでぶれない。しかも抜群のロブショットの持ち主だ。軸がぶれないのは全身のフィットネスのたまものだろうか。大きな軌道の源は、ホバーと呼ばれる動作だといわれる。クラブを始動する時、一度クラブヘッドを地面から浮かせる。これによって体がねじりやすく、テークバックのスピードも一定に保てる。弧も大きくなると評論家は分析している。

 もう一つ、50歳を過ぎてなお自然体でプロ生活を続けていられるのは、「ツアーより家庭を優先する」という人生観が大きいだろう。

 39歳の時、母と妻が共に乳がんと診断された。ミケルソンは迷わずツアーを離れ、家族と過ごし支えた。17年の全米オープンは、「娘の高校の卒業式に出席するため」欠場している。若い頃の奔放な発言だけでなく、最近もLIVゴルフに参加してPGAツアーを痛烈に批判するなど、独自の地平を行くミケルソン。54歳10カ月で出場する32回目のオーガスタでどんなドラマを見せてくれるか。

小林信也(こばやしのぶや)
スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部などを経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』『武術に学ぶスポーツ進化論』など著書多数。

週刊新潮 2025年4月10日号掲載

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