断トツの好感度で「CM」を席巻…大手代理店OBが明かす「90年代の広末涼子」は本当に凄かった

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今の時代で言うと誰?

 再度書くが、これは本当かどうかは分からない。ただ、両社の社風の違いを示すには象徴的な都市伝説(事実の可能性も捨てきれないが……)である。電通との競合プレゼンで博報堂はぶ厚いマーケティング分析の企画書を提出し、それを元に最適な広告の表現案とタレントのキャスティング案を出した。

 これに対し、電通の企画書は薄く、「とにかく今、一番人気の広末涼子さんを起用して話題化しましょう!」といったものだったという。そして、プレゼンでその場を仕切る電通の営業マンは「はい、実は本日広末さんを連れてきています!」と言い、ドアを開けるとそこには広末が立っており、頭を下げて「ぜひ、よろしくお願いします!」。これには広告主もメロメロになり、電通が競合プレゼンに勝ったという――。

 本当にコレはうさんくさい話ではあるものの、実際私が先輩から聞いた話である。当時、広告業界でいかに広末が人気だったかを示すエピソード(or創作話)である。

 さて、だったら今の時代では当時の広末は誰に匹敵するか? さすがに大谷翔平のレベルではない。綾瀬はるか、橋本環奈といった人気者はいるが、広末はさらにこの上にいたのでは……というのが、私の現在の実感である。

熱狂を生んだ「落差」

 その後広末は「自由に生きて立派に子どもを育てるアイコン」的存在になったが、スキャンダル的なことで登場することが多くなった。あとは「ママになっても相変わらずの美しさでオーラを放っていた」的なものも。1990年代後半のあの時、日本全体で広末に熱狂した時の「貯金」的なものもこうした好意的な報道に繋がった。しかし、今となっては「自称広末涼子」「広末涼子容疑者」である。

 この落差こそが、今回の過熱報道とネットの熱狂に繋がったのではなかろうか。何しろ彼女に熱狂したメディア人が今や編集長やデスククラスになっているし、そこに反応する人々も団塊ジュニアをはじめ、人数が多いのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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