ウォール・ストリート・ジャーナルを買ってみたら「思想強すぎ」でビックリ! そういえば日本にも“偏向報道”が…(中川淳一郎)
そろそろ老後に備えて投資でもすっか~、と思い立ち、ウォール・ストリート・ジャーナル電子版の購読を始めました。アメリカの市況や政策は日本にも飛び火する。だから日経電子版よりこちらだろうという短絡的な発想です。月額2ドルという激安ぶりもイイ。
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しかしですねぇ、思想が強過ぎるんです! アメリカのメディアには“主張を押し出すことこそ正義”といった伝統があるにせよ、とにかく共和党が大嫌い。連日のごとくトランプ大統領とイーロン・マスク氏の大批判を展開します。
この二人を中心とした共和党政権が経済の足を引っ張り、アメリカに物価高をもたらし、庶民生活を悪化させている、などと“悪魔化”を加速させるのです。
マスク氏がけん引するテスラの株価が9週間連続で下落していることについても「ホレみたことか!」といった体(てい)で報じます。社説ではテスラが法人税を払わない理由を解説。それによると、2003年から20年まで赤字だったことがまず一つ。アメリカの法律では、企業が事業を継続できるよう、赤字を計上した場合は純営業損失額を繰り越し、翌年以降の税額から控除されます。
さらに、グリーンエネルギー関連の控除があることも記しつつ、この制度がバイデン政権下で定められたことを強調します。そこには「敵であるバイデン政権のおかげでテスラはいい思いをしたくせに、マスク氏は共和党の中枢に入り込んだ。政治を自社の利益誘導に使うことを考えているひきょう者かつご都合主義者だ」と訴えたい底意がのぞきます。
他にも、アメリカが新たに関税を課す経済強国、すなわち中国、EU、メキシコ、ベトナムなどのことを共和党内で「ダーティー15」と呼んでいるとも報じます。これを聞けば「はしたない。共和党政権のほうがよほどダーティーよ!」と読者は思うことでしょう。とにかく偏っている印象です。
ここで思い出したのが、文化放送が中継する「ライオンズナイター」です。1982年から放送が始まり、85年から92年まで「はっきりいってライオンズびいきです!!」をキャッチコピーに、徹底的な西武寄りの中継を行った。
今なお西武びいきの番組で、相手チームの攻撃の時は「ストライク入ってるだろ!」「空振りしろ!」なんて言う。ホームランになるかならないか微妙なボールが上がったら、ファウルになれとばかり「風、吹け、吹け、フーフー」とやる。
他のスポーツも負けていません。サッカー日本代表の試合をテレビ朝日が中継する時、解説者の松木安太郎氏は日本びいきの姿勢があらわなことで有名です。「いいボールだぁ!」「ゴールちょっとズラしたいよね」「今のはキーパーがいなかったら入ってた!」。これぞ応援団の心情を代弁するもので、1点を追う展開で残り時間5分なら「まだまだ時間はありますからね」とあくまでも前向き。
しかし一方、勝っている時にロスタイムが長過ぎたら「ふざけたロスタイムですねぇ!」とキレる。
これらはまさに「日本のウォール・ストリート・ジャーナル」とでも呼べそうな偏向報道。曲がりなりにもクオリティーペーパーとされる新聞と同列にするのは、むしろホメ過ぎかもですが。


