玉音放送を聞くと「じゃあ、整列して腹を切るか」と呼びかけ… “日本人とは何か”を考えた篠田正浩監督の根底にあった敗戦
映画に必要なのは“人間力”
母校、早稲田大学で特命教授も務めた。60年代後半から交友がある映画監督で早稲田大学名誉教授の安藤紘平さんは言う。
「映画には人間力がいるんだと言い、大学院、学部を問わず広く学生を受け入れる異例の講義を実現できたのは、篠田さんのおかげ。学生に語りかけるだけでなく、新しい才能や映像技術に敏感な姿は昔のままでした」
21年ごろからパーキンソン病の症状が現れ、今年1月に転倒して骨折。肺炎を患って容体が急変した。3月25日、94歳で逝去。
現場で公私をきっちり分け、岩下さんに家事を強いることもない。のんびり屋の岩下さんに対し篠田さんはせっかちだった。73年に1女を授かっている。
岩下さんは〈「僕たちは映画という魔物に取りつかれて二人で魔物退治をやっていたようなもの」と申しておりました〉などと語った。篠田さんにとって頼もしい同志であり、生きる原動力でもあったのだ。
[3/3ページ]


