自民党が日本郵政“650億円”支援策をぶち上げた理由…自民党の集票マシンと化した「全国郵便局長会」の闇 元局長が“16億円”巨額詐欺事件に手を染めたことも

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被害額16億円超

 さらに、局長会の特殊さを象徴しているのが、人事である。

「一般の局員と違い、局長は原則として転勤することはありません。また、局長になるには会社の登用試験の前に局長会による“事前選考”を通過することが必要だという暗黙のルールもある。その事前選考の際に重視されるのが、局長候補が世襲であるかどうか。内部資料には、2018年時点でおよそ3割の局長が世襲だと書かれており、私も取材の中で4代目だという局長にお会いしたことがあります」

 局長の世襲と不転勤が続けば、郵便貯金など、多額のカネをごく限られた人物が扱うことになり、リスクが伴うことは言うまでもない。そのリスクが「事件」として顕在化したのが、元局長による巨額詐欺だった。

 被害額16億円超――。『ブラック郵便局』には長崎市の元郵便局長が起こした巨額詐欺事件の全貌が描かれている。2021年、宮崎氏に「元局長が顧客から現金をだましとっていた」という情報が寄せられたことが発端だった。

<不祥事を起こしたとされるのは、元局長のU氏(67)。郵便局で過去に使用されていた証書を手渡して相手を信用させ、貯金名目で現金を詐取するという手口だという>(『ブラック郵便局』より)
 
 U氏は3世代に渡る世襲。言葉巧みに顧客から現金をだまし取ろうとしていた。

<取材を進めると、U氏の生々しい語り口や暮らしぶりが見えてきた。

「特別な金利で優待します。ごく限られた信頼できる人にしか紹介していません。明後日までに500万円用意できませんか」

 長崎市の医療機関経営の男性(60代)は、U氏からこんな勧誘を受けたと明かす。

(中略)

 長崎市の70代の女性は「貯金」の勧誘を繰り返し受け、合計数千万円をだまし取られていた>(同)

 日本郵便は調査の結果として、詐取した現金のうち3億円の使途を公表している。

<一戸建て4軒とアパート1棟、自家用車21台の購入費のほか、ゴルフ代、飲食代などに使ったと確認されている>(同)

 結局このU氏は21年に詐欺容疑で逮捕された。本格的に詐欺に手を染めるようになったのは、1996年に父親から局長職を譲り受けてからだった。まさに世襲と不転勤により外部の目が入らなくなったために引き起こされた事件だったと言っていいだろう。

局長会は裏の組織

 こうしたトラブルの影で、局長会のあり方にメスが入らないのはなぜか。

 最後に宮崎氏が語る。

「日本郵便の内部では局長会は“裏の組織”だと言われています。表向き、局長たちは地域貢献を掲げて、消防団に入ったり商店街の役員になったりしながら、地域に溶けこもうとしている。そうした活動を誰も否定できませんし、局長自身もそれを正しいと思っている方がほとんどです」

 一方で、

「局長に関しては、人事を含めて理解に苦しむルールが存在しています。そのルールを合理化しようとせず、歪なまま放置されているのは、日本郵政が実態を知っていながら、黙認しているからなのです。私は何度も局長会にも取材を申し込みましたが、応じようとしません」

 日本郵政グループで続く不祥事の影で局長会という果てしない闇が広がっているのである。

デイリー新潮編集部

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