ソフトバンクの「1兆円買収」でよみがえる孫正義氏の“黒歴史” 「失敗が多いことも事実」

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870億円の赤字企業

 ソフトバンクグループ(以下SBG)の後藤芳光CFOは、銀行マンから転職して間もない頃、孫正義氏が売り上げ0円の会社に、いきなり30億円を投資するのを見て、びっくりしたと述懐している。その会社は中国のアリババグループ。現在、売り上げ18兆円以上を誇る巨大EC企業だ。

 そのSBGが、米アンペア・コンピューティングを約1兆円(65億ドル)で買収すると発表したのは3月20日のこと。今度は870億円の赤字企業である。孫氏が半導体設計会社の英ARMを上場させ、9兆円超の時価総額を記録したのは一昨年9月。今度は何を狙っているのだろうか。

 微細加工研究所の湯之上隆所長に聞いてみる。

「アンペア社は新興のAI用半導体企業ですが、大枚を払って買収するのは、今年1月に発表した“スターゲート計画”が背景にあります。ご存じのように、孫氏は米オラクルのラリー・エリソン氏、米オープンAIのサム・アルトマン氏と一緒にトランプ大統領の前で最大5000億ドル(75兆円)の投資を行うと宣言しました。すごい金額ですが、内容は主に全米各地でAI専用のデータセンターを建設するというものです」

「孫さんは失敗が多いことも事実」

 そのデータセンターにはAI用チップを積んだサーバー(コンピューター)が何百台と置かれる。AI用チップは目下8~9割を米エヌビディア社が作っており、ほぼ独占といっていい。同社の主力商品「H100」は、1枚400万~500万円もする。

「しかも、同社がリリースした新チップ『ブラックウェル』は、1枚1000万円を超えるといわれています。それならば自前でAI用チップを開発した方が安上がりのはず。すでにグーグルやアマゾンがAI用チップの開発に着手していますが、こうした動きの延長線上に今回の買収があるとみてよい。業績が赤字だとかは関係ありません。AI用チップを作る技術があるかどうかを判断しての投資でしょう」(湯之上氏)

 が、心配もある。経済ジャーナリストの町田徹氏が言う。

「孫さんは、アンペア社が第二のARMになると考えているのでしょう。確かに同社やアリババといった会社を発掘してきた孫さんですが、それ以上に失敗が多いことも事実。シェアオフィスのウィーワークもそう。自信満々で1兆円(当時)を投じましたが、結局破綻してしまいました」

 今度も“大当たり”となるのかどうか。

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