窮地のフジテレビで唯一「バズる」バラエティ 悪ノリと感動が交差する「千鳥の鬼レンチャン」

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最大のスター、ほいけんた

 この「サビだけカラオケ」から生まれた最大のスターが、明石家さんまのものまねで知られるほいけんたである。ほいは歌が上手いことでも知られており、この番組では明石家さんまの扮装をしながら、自慢の歌声を披露してきた。

 しかし、高音部になると普通の発声法では声が出ないため、歌詞を勝手に変えて強引に歌い切ってしまう。T.M.Revolutionの「HIGH PRESSURE」を歌った際には、「カラダが」という歌詞を「カラダぐぅ」と変えて歌ったことで爆笑を巻き起こしていた。そんな彼のことを千鳥やかまいたちは平気でルールを破る罪人のように扱い、徹底的にイジり倒して笑いを増幅させていった。

 そんな悪意のある笑いが満載のこの番組でも、ときには感動的な場面もあった。浜田雅功のものまねで知られる芸人のハリウリサは、歌唱力に自信があり、「サビだけカラオケ」に挑戦した。そのVTRの中で、外国人である母親への感謝の気持ちを込めたオリジナル楽曲「ヴィルマ」が披露され、それが視聴者を感動の渦に巻き込んだ。いつも悪態をついてばかりの千鳥とかまいたちも、このときばかりは真面目な顔で聞き入っていた。

 千鳥とかまいたちは今のお笑い界を代表する最強のツートップであり、この2組が共演する番組は無類の安定感を誇っている。その中でも、ツッコミどころ満載のVTRをエサにして2組の至高のイジりを引き出す「千鳥の鬼レンチャン」は、よくできたフォーマットの上質な番組である。4月からは放送枠が2時間に拡大されるという。フジテレビ再生のためのカギになる看板番組として、今後も長く続いていってほしいものだ。

ラリー遠田<>br 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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