医学部予備校の代表が「中学受験に塾は必要ない」と断じる理由 医学部受験とも共通する「手を出してはいけない問題」とは

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 中学受験をするなら、塾に通うのが当然――。いつからか常識になっている世間の空気に真っ向から反対する人がいる。自身も中学受験を経験し、現在は医学部専門予備校エースアカデミーの代表を務める高梨裕介氏だ。なぜ中学受験に塾が不要と言い切れるのか。その理由を聞いてみた。(石渡真由美/ライター)
【前後編の前編】

中学受験を過酷なレースにしてしまう、間違った「思い込み」

 少子化にもかかわらず、近年の首都圏では、中学受験が加熱している。子どもたちは、大手進学塾の中学受験クラスがスタートする小学3年生の2月から塾通いが始まり、そこから3年かけて受験準備を進めていくのが王道だ。人気の難関塾では、少しでも早くアドバンテージを得ようと、低学年から塾に通う子も少なくない。

「中学受験をするなら塾に通わなければいけない」と誰もが信じて疑わないのはなぜなのか。すべては「間違った思い込み」から始まっている、と高梨氏は指摘する。

 京都府出身の高梨氏は中学受験で灘中学などの最難関に合格し、その後現役で大阪医科薬科大学に進んだ。現在は「教育から医療をよくする」を理念にエースアカデミーという医学部予備校の代表を務める。

「中学受験をするなら、塾に通うのが不可欠。多くの親御さんはそう思っています。なぜなら、中学受験の入試問題は、小学校のカラーテストとは大きくかけ離れて、難しい問題ばかりが出題されると思っているからです。たしかに一見、難しそうに感じます。でも、実は基礎をしっかり身に付けていれば、塾に頼らなくても中学受験は十分可能です。実際、教科書ワークを使った基礎学習だけで、偏差値70以上に到達した子もいます。

 同じことは医学部受験でも言えます。医学部と言えば、理系の最難関学部として恐れられていますが、実は基礎学力勝負の世界。難しい問題が解けなくても合格はできますが、基礎的な問題で失点していると不合格になります。そのくらい基礎が重要なのです」

そもそも満点で合格する必要はない

「そもそも中学受験でも、医学部受験でも100点を取って合格する人はほとんどいませんし、取る必要もありません。それは裏を返せば、『入試には解けなくてもいい問題が必ず含まれている』ということです。さらに言うと、そういう問題は絶対に『手を出してはいけない』のです」

 入試本番でそれらの「難しい問題」に手を出してしまうと、

「当然、答えが出るまでに時間がかかります。場合によっては、考えても、考えても答えが出ないこともある。その間に、試験時間は刻々と過ぎていきます。そして、気づいたときにはタイムオーバー。または、時間がないという焦りから、本来であれば正解できたはずの基礎問題で思わぬミスを犯してしまうのです。これが、入試の怖さです」

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