スーパーのコメが「5キロで5000円」の異常事態に…「新米が出回ればコメ問題は解決」と繰り返してきた「農水省」に批判殺到
収入が増えない農家
この間に行われた大臣会見を見てみよう。まず11月22日、記者が「10月の消費者物価指数で米類は58%も上昇した」と質問。これに江藤農水相は「これまでの米価が、果たして生産コストに対して適正なものであったのかと、国民の皆様に考えていただきたい」と回答した。
コメ農家の生活は苦しく「時給100円」という自嘲があったことは事実だ。ネット上でも「コメの高騰で農家の懐が潤うのなら甘受する」という意見は今でも少なくない。江藤農水相の発言も同じ方向性にあるものと考えられる。
ところが、当事者であるコメ農家が江藤農水相の見解に異議を唱えている。米どころ新潟県のコメ農家に詳しい関係者が言う。
「少なくとも私が知る農村地帯で、価格の上昇が収入に反映されたコメ農家は誰もいません。買い取り価格が多少は上がっても、等級の判定で評価が下がり、収入は横ばいなのです。私が『全く儲かっていないんですか!?』と驚くと、『儲かっていたら誰もコメ農家を辞めないよ』と言われました。コメ農家の人たちが集まると、『一体、誰が高騰で儲けているんだ?』の話で持ちきりです。『地元のJAすら儲かっていない』ことは確かで、その先は見当も付きません」
流通を悪者にした農水相
消費者は高いコメを買わされ、生産者は全く儲かっていない──。これではネット上で農水省への不満が爆発するのも無理はない。しかも「消えたコメ問題」まで浮上した。担当記者が言う。
「農水省の調査によると昨年に収穫されたコメは679万トン。前年より18万トン増えたことになっています。ところが12月末の時点で集荷されたコメは215万トンで、昨年と比べて20万トンも少ないのです。コメの収穫量が増え、価格も上がっているのですから、本来なら昨年より集荷量が増えるはずです。ところが実際には減っています。この20万トンが“消えたコメ”と呼ばれるようになりました」
2023年の集荷量は236万トン。24年は215万トンのため前年比の91・1%にとどまっている。8・9%が市場に出回っていないとしたら、コメ価格が高騰するのは当然かもしれない。だが、実情は違うようだ。
「農水省が調査しているのは大手の集荷業者や卸だけです。コメの高騰で中小規模の卸も集荷量を増やしていますし、大手外食産業が卸を通さずに買い付けたり、農家が消費者に直販したりするケースも増えていると考えられます。ところが江藤農水相は1月31日の会見で『どこかにスタックしていると考えざるを得ない』と集荷業者や卸を一方的に批判しました。更にコメの価格を釣り上げようと出し渋っているというわけですが、確たる証拠はありません」
コメが安くならない可能性
大前提として農水省が備蓄米の放出を躊躇したことが、今の高騰と混乱を生んだ可能性は否定できない。江藤農水相の発言は、農水省のミスを隠蔽するため、流通を悪者に仕立て上げたと批判されても仕方がない。
遅きに失したとはいえ、備蓄米は放出されるらしい。だが、5キロ4500円から5000円台というコメが、果たして2500円台に戻るのだろうか。専門家の間には悲観的な予測も決して少なくないのだ。その理由は──。
第2回【コメ高騰で「台湾米」と「カルフォルニア米」が大人気という皮肉…備蓄米の放出が“効果薄”なら消費者の失望を買う結果に】では、消費者が自衛のためカルフォルニア米や台湾米を購入し、「日本人の日本米離れ」が進行している事実や、備蓄米が放出されてもコメの価格は下がらない可能性があることをお伝えする。
註1:24年産米価格が過去最高 平成のコメ騒動超え(日本食糧新聞:1月22日)
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