政府のカネが底をつく…窮地に追い込まれた米財務省 トランプ政権の勢いを一気に失速させかねない「連邦債務の上限問題」

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トランプ政権の勢いが一気に失速する可能性も

 共和党の保守強硬派は低所得者層への支援削減を求めているが、昨年12月の世論調査で回答者の73%が削減に反対していた。強行すれば、来年の中間選挙で共和党に逆風が吹くのは確実だ。

 代替案を示さなければならないベッセント氏に、具体案があるようには見えない。

 政府効率化省のトップに就任したイーロン・マスク氏も当初、6兆7500億ドル規模の米連邦予算のうち2兆ドルを削減すると鼻息は荒かったが、今年に入り「2兆ドルの削減は最良の結果であり、たとえ達成できたとしても長丁場になる」とトーンダウンしている。連邦政府予算の3分の2が国債の利払いなどの義務的な経費であり、削減が困難であることを認識したからだろう。

 このように、債務上限の引き上げをめぐる状況は深刻だと言わざるを得ない。ベッセント氏が保守強硬派を満足させる財政削減案を提示できなければ、政府の金庫が底を突き、デフォルトを宣言せざるを得なくなる。そうなれば、トランプ政権の勢いは一気に失速してしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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