政府のカネが底をつく…窮地に追い込まれた米財務省 トランプ政権の勢いを一気に失速させかねない「連邦債務の上限問題」
連邦政府のデフォルト危機が深刻化
米国独自の制度がもたらすリスクも顕在化している。1917年以来、米国では連邦債務の上限が法律で定められているが、2023年1月には現行の限度額(約36兆ドル)に達した。昨年 6月に「財政責任法」が成立したおかげでその後も国債が発行できたものの、この法律も1月1日に失効した。
米国債の追加発行ができなくなったことから、米財務省は窮地に追い込まれている。21日には、当座の支払いの必要がない公務員の医療給付基金や退職年金基金への資金拠出を中断した。さらに23日には、政府証券投資基金への再投資停止を決定した。
これらの措置により、連邦政府がデフォルト(債務不履行)に陥いることは今後数カ月間ないとしているが、予断を許さない状況に変わりはない。ベッセント氏は就任早々、この難問に向き合わざるを得なくなっているのだ。
この債務上限問題などが災いして、昨年9月以降、米国の長期金利(10年物の国債利回り)は1%近く上昇している。問題の解決に手間取れば、長期金利が今年中に6%にまで急騰する可能性は十分にある。
「減税が延長できなければ、米国経済は失速」
高金利が米国の企業活動に大きな打撃を与えていることが明らかになっている。米S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの発表によれば、昨年の米企業の倒産(破綻時の資産あるいは負債が200万ドル以上)の件数は前年比9%増の694件だった。リーマンショックの影響が残る2010年以来の高水準だ。
トランプ氏がダボス会議の場でOPECに原油価格の引き下げを求めたのは、国内の金利をなんとしてでも下げたいとの思いからだ。
トランプ氏が主張する個人所得減税の延長のためにも、債務上限問題の引き上げは不可欠となる。ベッセント氏も「減税が延長できなければ、米国経済は失速する」と危惧している。
ベッセント氏は16日、上院での指名公聴会で、「議会と協力して債務上限問題に対処する」と主張した。だが、下院での共和党 は僅差での過半数となっているため、財政削減を求める共和党の保守強硬派の同意を得られなければ、債務上限の引き上げができない情勢となっている。
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