受験シーズンに過去最悪レベルの「インフルエンザ」が猛威…今後は「受験生に流行」の可能性大も、医師が「治療薬がなくとも絶望的な状況ではありません」と説く理由
タミフルがなくても大丈夫
今後、小学6年生から大学浪人生までの世代にインフルが猛威を振るうというのだ。受験生にとって聞き捨てならない事態であることは言うまでもないが、秋津医師は「冷静になることが何よりも重要です」と指摘する。
「私は東京・品川区で『秋津医院』を運営していますが、この地域ではワクチンも治療薬も不足していません。状況は地域によって違いがあると思いますので、医師の説明を聞いてください。さらに治療薬がなくとも絶望的な状況ではありません。昭和の病院はインフルの検査キットも、治療薬のタミフルもありませんでした。医師は感染状況や患者さんの体温などを総合的に判断し、『インフルの可能性が高いです』、『ただのカゼでしょう』と診断を下していました。しかし、当時と今とでインフルを原因とする死者数に劇的な違いがあるかといえば、そんなことはありません」
昭和の患者はタミフルがなくても治った。では今の患者がタミフルを飲む理由はどこにあるのだろうか。
「極端に衰弱していれば話は別ですが、普通の体力と抵抗力を持つ人で、なおかつ極端に重症化するインフルが流行していないのであれば、5日も寝ていれば治ります。今、流行しているインフルエンザはA型で悪質なものではありません。ならばタミフルの薬効は何かと言えば、3日の安静で治るという点です。寝ている時間が短くなるというのが最大の効能で、もし仮にタミフルの在庫が日本全国で消えてしまったとしても、そのためにインフルの治療法がなくなるというわけではないのです」(同・秋津医師)
会社や学校はサボるべき
子供は熱に強い傾向がある。インフルで高熱を出していても、元気に走り回る姿を見たことのある親は多いだろう。
「うなされるなど、高熱で苦しんでいれば解熱剤を飲む必要があります。しかし本来、人間はインフルエンザウイルスを撃退するために体温を上げるのです。高熱は免疫が健全に機能している証拠であり、無理に熱を下げる必要はないのです」(同・秋津医師)
原点に立ち返り、インフルに罹患すれば、どう対処すればいいのだろうか。
「インフルに罹患した患者さんの免疫力をアップさせることは、さすがに無理です。ならば現状の免疫力をできる限りインフルに専念させる必要があるわけです。そのためには体力を温存するしか方法はありません。私は患者さんに『仕事や学校をサボり、可能な限り食事し、とにかく寝ること』とお願いしています。入浴の是非も昔から議論されていますが、これも免疫力と関係があります。長湯は体力を消耗させ、結果的に免疫力を下げるからインフルに罹患した時は控えるべきなのです。良くないのは、タミフルを処方されて出社する社員です。私が『休めませんか?』と訊いても、『仕事に追われており、土日も出社が必要な状況です』という答えが返ってきます。相手が大人の患者なので何も言いませんが、『治るまで長びきますよ』と忠告はしています」(同・秋津医師)
冷静が重要
タミフルを飲まなくても、5日間寝ていれば治る──ならば受験生の場合、いっそのこと今すぐインフルに感染したほうがいいと考えてしまうかもしれない。
「冗談半分ですが、『受験生は年末にインフルに罹患したほうがいい。免疫が確実にできる』という説もあります。しかし、だからと言ってわざと罹患しようとするのは間違っています。最大でも5日、早ければ3日で治るのですから、受験生もご両親も冷静になることが大事です。ただ本命の学校など、休むことが許されない日があるのなら、その直前に自宅に引きこもるのは間違ってはいません。インフルの潜伏期は2~3日間ですから、受験日の4日前から家の中だけで生活し、外には一歩も出ないわけです。そもそも受験勉強は日頃の積み重ねが重要で、直前の勉強は効果を発揮しないものです。直前の4日間は家の中でリラックスし、健康的な生活を心がけ、免疫力が100%の力を発揮できるようにしてください」(同・秋津医師)
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