侍ジャパンの新エース・中日「高橋宏斗」 高校時代の恩師は「決して投げやりになることがなかった」と驚異的な成長の“理由”を振り返る

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大学進学から進路を変更して、ドラフト1位

 それでも、高橋は慶応大進学を希望していたが、AO入試に不合格となりプロ入り。大学進学から進路を変更して、ドラフト1位というのもなかなかない話である。現在の活躍でファンもすっかり忘れているかもしれないが、プロ1年目は、二軍で14試合に登板して0勝5敗、防御率7.01と結果を残せなかった。

 冒頭で触れたように、昨年のキャンプでは、フォームを崩して出遅れている。そう考えると、常に何かに躓きながら、高橋はステップアップをしている。このような成長を描くことができた理由について、高橋監督はこう話す。

「高校時代も何か上手くいかないことがあっても投げやりになるようなことはなく、常に課題を見つけてそれに対してしっかり取り組めるところがありました。プロの1年目は少し慎重になり過ぎて、合同自主トレの時から明らかに状態が良くなかったです。実際、二軍の結果は悪かったですが、(その年の)オフに話した時にも決して悲観的になることなく、『プロでの1年のリズムが分かった』と話していました。そうやって冷静に自分を判断して対応していく力は持っていると思います。上手くいきすぎるとちょっと調子に乗るところがあるので、定期的に上手くいかないことがある方が良いのかもしれませんね(笑)。ただ今の宏斗の投球や取り組みを聞いても、こちらが何か言うことはないくらい成長してくれたと思います」

 野球界は以前と比べてあらゆるデータが増えており、そういう意味でも、高橋の持つ修正力は大きな武器となるはずだ。すっかりチームの柱となった印象を受けるが、今年の8月9日で23歳になる選手。成長のピークは、まだまだ先にあると言えるのではないだろうか。今季はもちろん、それ以降もさらなる進化を遂げ、押しも押されもせぬ、球界の大エースへと上り詰めてほしい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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