中山美穂さんの悲劇で注目の「ヒートショック」対策 断熱ジャーナリストは「3LDKマンションなら20万円台で可能」補助金でほぼ半額に

国内 社会

  • ブックマーク

日本の住宅は国際的な基準では無断熱に近い

 日本の住宅性能に詳しいノンフィクションライターで、『「断熱」が日本を救う』(集英社新書)の著作のある高橋真樹氏は、“断熱ジャーナリスト”としても活動している。高橋氏は、

「中山さんの死因と直接の関係があるかは分かりませんが」

 と断った上で、このように指摘する。

「消費者庁の統計によると、住宅のお風呂で溺死する65歳以上の高齢者は、年間に約5000人いるとされます。また別の推計では、入浴中に倒れて他の疾病で亡くなる方は、年間に約1万7000人にのぼるとも言われます。全国の交通事故の死亡者数は2022年で2610人。この推計値で比較すると、6倍以上になります。そして、その大きな要因となっているのが、日本の住宅の断熱性能の低さなのです」(高橋氏)

 というのも2022年4月まで、日本の断熱性能は1~4の4段階評価で、「開口部に複層ガラスを用いる」と規定される「4」が最高等級と位置付けられてきたが、

「実は2023年の時点で、既存住宅5000万戸のうち、最高等級4の基準を満たしている住居はわずかに13%しかありません。しかも、その等級4の基準自体、国際的に見ると極めて低い断熱性能なのです」(同)

 国も問題意識は持っており、この「断熱性能基準」は、2022年に5~7が新設され、全7段階となった。さらに2025年4月からは新たに建築される住戸すべてが等級4の条件を満たすことが義務付けられることになった。

「大きな前進ではあるものの、対象はあくまで4月以降に建てられる新築ですから、既存住宅の断熱性能とは関係がありません」(同)

アルミサッシの窓は“最悪”

 WHO(世界保健機関)は、「住宅と健康ガイドライン」の中で、寒さから健康を守るための最低室温の基準を18℃と設定している。基準の参考元となったイギリス保健省の調査では、室温が18℃未満では血圧上昇や循環器系疾患に影響し、16℃未満では呼吸器系疾患に繋がるとの結果も報告されているという。

「日本の最低室温については、断熱改修を予定している住宅の約9割で室温が18℃を下回っているという測定結果もあります。日本では多くの家がWHOの基準を満たしておらず、国際レベルでは“違法建築”とも呼べる状況となっているのです」(高橋氏)

 なぜ日本の住宅はこれほどまでに“寒い”のか。

「断熱材が敷設されているかどうかなど、色々な要因があるのですが、1番分かりやすいのが“窓”です。住宅が外気温の影響を受ける割合は、戸建てで約5割、マンションでも3~4割は窓による影響と考えていいでしょう」(同)

 戸建ての方が影響が大きいのは、窓が大きく、数も多くなりがちだからだ。また、日本の住宅で特に窓が問題とされるのは、その材質と構造に理由がある。

「住宅の中でもっとも熱が出入りする、窓やドアなどの開口部からは、夏は74%の熱が侵入し、冬は50%の熱が出て行ってしまいます。日本の窓で問題なのは、いまだに多くの住宅でアルミサッシが採用されていること。欧米で使われる樹脂製や木製の窓枠と比較し、アルミサッシの熱伝導率は1200倍にもなります。実は、冬に気温が下がる先進国でアルミサッシが重用されているのは日本だけなのです」(同)

 ちなみに、中山美穂さんの住居は70平米ほどのマンションだったと言われているが、リノベーションで壁をなくした「吹き抜け構造」だったとも報じられている。

「吹き抜け構造の住居の場合、特に暖房効率が悪くなりますので、断熱性能が高くないと、部屋全体が寒くなりやすいということは言えると思います」(同)

次ページ:意外とお手頃な「内窓追加」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。