「103万円の壁」引き上げで手取りはどれだけ増える?  所得税20%の人は「無条件で15万円アップ」

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「95年以降、実質的に変わっていない」

 青山学院大学元学長で元政府税制調査会専門家委員会委員、弁護士でもある三木義一氏は、

「基礎控除の額は戦後日本の場合、最初は4800円から始まって、その後は物価上昇などを考慮して引き上げられていきました」

 と、解説する。

「1980年ごろ、大平正芳内閣の時から毎年の引き上げはやめ、一定の年数ごとに見直すよう変わりました。それで95年までは数年ごとに見直していたのですが、それ以降はサラリーマン目線でいえば、実質的に変わっていません」

「財務省が嫌がってやってこなかった」

 2020年には基礎控除が38万円から48万円に引き上げられたが、同時に給与所得控除が65万円から55万円に10万円分引き下げられたため、非課税枠全体としては103万円のままだ。

「他の国々の場合でいえば、やはり物価その他に合わせて、00年以降もかなり頻繁に基礎控除を引き上げてきました」

 と、三木氏は言う。

「00年当時、日本の財務省は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスに比べて、日本は課税最低限が一番高い(所得税をかけ始める基準額が最も高い)のだと誇っていました。しかしずっと基礎控除を上げてこなかったので、24年現在のデータを見ると、その5カ国中で最下位(所得税をかけ始める基準額が最も低い)になってしまっているわけです」

 なぜ日本だけが基礎控除を放置してきたのか。

「やはり基礎控除を引き上げるというのは、税収減がそれなりに大きくなる。財務省がそれを嫌がってずっとやってこなかった、というのが根本だと思います。これまで与党単独で過半数を占めている時はこういう問題には頬かむりをしてきた。しかし少数与党になったおかげで議論がようやくできるようになったのはよかったと思います」(同)

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