「ガラスの天井」を突き破るハリス氏だが、追い風が続く保証はない…国民の5人に3人が「米国は既に不況」【米大統領選】
マイノリティの象徴に熱狂
米大統領選挙の形勢は8月に入り大きく変化した。
ハリス副大統領が民主党候補に名乗りを上げたことで、トランプ前大統領の勢いに陰りが出ている。米紙「ワシントン・ポスト」が8月18日に公表した世論調査の結果によれば、ハリス氏の支持率は49%と、トランプ氏の45%を4ポイント上回った。
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バイデン氏に代わって出馬したハリス氏が新風を吹き込み、若者を中心に支持を集めている。「若者たちはハリスに『恋している』」「オバマ氏が大統領選に出馬した時の熱狂を彷彿とさせる」との声が出ているほどだ(8月13日付BUSINESS INSIDER)。
ハリス氏が旋風を巻き起こしている最大の理由は、「ガラスの天井(性別や人種などを理由に低い地位を強いられること、またはその障壁自体)」を突き破ったことだ。当選すれば「女性初」「黒人初」「アジア系初」の大統領になる。マイノリティの象徴とも言うべきハリス氏が大統領候補となったことに、不当な差別への反発が強いとされる米国の若者が熱狂するのは当然なのかもしれない。
ハリス陣営は中西部イリノイ州シカゴで開催中の民主党大会で結束を固め、一層の支持拡大を狙っている。だが、フォローの風が続く保証はないと言わざるを得ない。米国民の間で、バイデン政権の経済政策に対する不満が高まっているからだ。
ハリス氏の経済政策案、効果は?
米国のインフレ率は下がってきているが、国民の不満は足元の値上がりよりも物価水準の高さにある。食品価格はコロナ禍前と比べ3割も上昇し、バイデン政権の経済政策への支持は昨年から4割を下回った。2008年のリーマンショック以来の低さだ。
この問題が深刻なアキレス腱になることを恐れたハリス陣営は16日、食品や住宅などの価格抑制に重点を置いた経済政策案を発表した。
食品については、企業が価格を不当に引き上げないよう連邦法を制定し、規則を破った企業に罰則を科す権限を米連邦取引委員会(FTC)に付与するという。供給が不足している住宅については、建設を支援する基金を400億ドル(約5兆9000億円)に倍増し、4年間で300万戸の新築住宅を建設することを業界に要請するとしている。
これにより、「就任後100日間で生活コストの引き下げを実現する」と強調するが、ハリス氏の支持率アップにつながるかどうかは定かではない。
共和党は早くも猛反発している。トランプ氏は17日、ハリス氏の価格抑制策を「共産主義であり、マルクス主義であり、ファシストだ」と厳しく批判した。政策が企業活動や市場に介入する傾向が強いというのがその理由だ。
ハリス氏の政策発表を機に、経済問題が大統領選の主要議題に躍り出た感がある。
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