“3カ月で歯が抜けた”“4000万円騙し取られた”まだある「インプラント詐欺」歯科の被害告発

国内 社会

  • ブックマーク

「歯根が術後3カ月で抜け落ちた」

 千葉市中央区の歯科医院「高橋デンタルオフィス」(現在は閉業)の元院長・高橋仁一容疑者が、詐欺の疑いで逮捕された。容疑は、患者の女性から200万円をだまし取ったというものだが、被害の声はそれにとどまらない。その女性を含め、週刊新潮の取材に重い口を開いた被害者たちの告発を紹介しよう――。【前後編の後編】(以下は「週刊新潮」2024年8月1日号掲載の内容です)

 ***

 前編「ついに逮捕の『詐欺インプラント歯科』院長 『健康な歯まで抜かれて…』被害者が明かす悪質すぎるその手口」では、700万円という大金を支払ったにもかかわらず、健康な歯を抜かれた上、治療を途中で中断された被害男性の悲痛な告発を紹介した。

 同じく前金で治療費を支払わされ、下の歯を全て抜いて、人工歯根を4本入れたところで治療が中断してしまった被害者もいる。下顎はかれこれ7~8年間、むき出しの歯茎にチタン製の人工歯根が埋め込まれた状態のままだというこの被害者は、

「下に4本入れた人工歯根のうち2本は深さが足りなかったのか、術後3カ月ほどで抜け落ちてしまいました。いまはだいぶ慣れましたが、当初は食べ物をうまくそしゃくできず、胃腸炎に苦しみました」

 それ以降はいくら通院しても、歯をちょっと見られるだけ。高橋氏は「骨の状態がまだよくない」などと理由をつけ、治療を進めることはなかったという。

「400万円戻ってくる」と言われたが…

 一方で、高橋氏の口車に乗せられ、大金を失ってしまったケースも数え切れない。2021年3月、治療費200万円を支払った千葉県在住の主婦(50代)もその一人。初診から2週間ほど経過したある昼下がり、高橋氏からの電話で急きょクリニックに呼び出されると、以下のように提案されたというのだ。

「この春から、ジルコニアインプラントを扱っている医師の中で一番上の立場になり、学会で発表する資料用のサンプルとして3名を選べるようになりました」

 選ばれた患者は、インプラントメーカーから治療費全額が戻ってくるとの触れ込みで、サンプルになるには「条件」があった。治療費と同額の“協力金”を払える患者に限るというのだ。高橋氏は、

「追加で200万円支払っていただけると、後日400万円戻ってきます。もう既に1人は決まっているのですが、どうでしょう?」

 と迫ったという。女性はとあるウェブサイトで高評価だった高橋氏を名医だと思い込み、TDOに通っていた。「名医がうそをつくはずがない」と話を信じ、夫に相談の上で“協力金”の支払いを決断した。この時に女性が交わした契約書を見ると、21年12月末と、治療完了時の2度に分けて200万円ずつ返還されることが明記され、高橋氏の実印が押されている。

次ページ:「あなたたち、年金で暮らせるでしょ」

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。