元米軍人が出版した「昭和天皇ヘイト本」 「旧日本軍が3000万人を虐殺」の記述に専門家は「根拠がなく、引用元もずさん」

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「歴史家として、評価に値しない」

 昭和天皇に関する描写についても眉をひそめる。

「“裕仁は兵士ごっこを楽しんだ”“征服された人々や自国民の苦しみには無関心だった”など。当時の日本への理解が不足しているだけでなく、日本人への配慮のなさもうかがえます」

 先の山田氏も指摘した、日本軍による犠牲者の数も信憑性に欠けると一蹴する。

「これはナチス・ドイツのホロコーストによる死者、600万人の5倍。先の慰安婦のケースと同じく、デタラメもいいところ」

 改めて、高橋教授は同書が国際社会に与える影響を強く危惧していると訴える。

「歴史家として、あの本は評価に値しないと考えます。ただし英語で出版されている以上、この内容が“世界の総論”として拡散し、各国で大きな誤解が定着する可能性がある。日本は早急に、官民が一体となって反論しなくてはなりません」

 日本での発売は未定ながら、識者がザワつく挑発的な中身。「販売部数の増加を狙った話題作りの筆致かも」(山田氏)との見方もあるが、単なる“ヘイト本”と見過ごすワケにはいくまい。

週刊新潮 2024年5月2・9日号掲載

ワイド特集「黄金狂時代」より

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