「亜細亜大学」中国人教授“消息不明”事件 拘束情報のウラで囁かれる「著書の問題部分」と「反スパイ法」の点と線

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 亜細亜大学の中国人教授が本国への帰国後、「消息不明」となっている問題について、林芳正・官房長官は22日、「関心を持って本件を注視している」と述べ、政府としても事態の把握に努める姿勢を示した。そうしたなか“失踪”の背景に、中国を襲う深刻な「経済失速」と習近平・国家主席による「反スパイ法の拡大解釈」を指摘する声が上がっている。

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 4月21日、亜細亜大学の范雲濤氏(61)が昨年2月に上海へ一時帰国後、所在が分からなくなっていることが判明した。范氏は中国籍で、2006年に同大大学院で教授職に就き、17年からは現職の同大都市創造学部教授を務めている。

 大学関係者によると、

「2月から大学は春休みに入るため、その期間を利用して范教授は出身地である上海に一時帰国したそうです。昨年4月までに日本に戻る予定でしたが、以降、本人と連絡が取れなくなってしまった。大学側が范教授の日本に住む家族を通じて連絡を試みた結果、昨年10月27日付で范教授の自筆による休職届が郵送で送られてきた。家族は『本人と連絡が取れている』と話したそうですが、大学側はいまも范教授とは“音信不通”のままです」

 1年以上も消息不明が続く「異常事態」を受け、現在、浮上しているのが「(范氏は)中国当局に身柄を拘束されている」というものだ。しかし当の中国外務省報道官は22日、「状況を承知していない」と話したのみで、調査の意思すら示さず。ちなみに神戸学院大学の中国人教授・胡士雲氏も同じく、昨年夏に一時帰国してから行方知れずとなっている。

日本人を破滅に追いやった上海女性

 実は范氏の「拘束説」には理由があると話すのは、さる警視庁関係者だ。

「范氏の一時帰国後に“中国当局が接触し、聴取を行った”との情報が存在する。ただし范氏がスパイ活動などに従事していたとは考えていない。もしそうなら、中国側がすでに日本を牽制する意味でも拘束の事実と理由を公表しているはず。范氏は弁護士資格を有し、日中間のビジネス紛争の解決に尽力してきたことでも知られる。そんな范氏の活動経歴が、どこかの段階で中国当局に目を付けられた可能性は高い」

 范氏の専門は主に国際法学で、上海復旦大学から京都大学に留学し、日本で法学博士を取得。都内の法律事務所に弁護士や顧問として在籍した過去があり、その経験を基にした著書も数多い。たとえば08年に出版された『中国ビジネス とんでも事件簿』(PHP新書)のなかで、范氏は弁護士としての自身を〈日中企業間のトラブルを扱うことが多く、日系企業の「駆け込み寺」と呼ばれている〉と記した。

 同書には、范氏が実際に関わったトラブル事例も紹介され、なかでも上海の地価高騰(当時)をエサに、中国人女性が不倫相手の日本人サラリーマンを言いくるめ、借金させてまでマンションを購入させたケースは“悲惨”のひと言。最終的に不倫相手の日本人男性は家庭崩壊や勤務先からの解雇、さらに数千万円のローン債務を負わされ「破滅」したという。

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