親戚から20歳で社長に売り飛ばされた女性と運命の出会い…43歳夫が明かす”10年不倫”がバレた末路

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10年に及ぶ密会

 そこから10年近くに及ぶふたりの密会が始まった。それぞれの配偶者に知られないよう、伶花さんの場合は仕事先にも顔が知られているため、より慎重にならざるを得ない。

 生まれた息子も、この春、小学校4年生になった。息子はかわいいが、「この子も結局、苦労するんだろう」と思うと不憫になると彼は言う。

「伶花と会うのはもっぱら東京でした。運良く、僕は出張が増えたし、休みをとって東京へ行くこともありました。会えるのはせいぜい月に1回か2回。それでもそのときだけはふたりとも何もかも忘れてお互いを求めあった。いつかふたりでどこかでひっそり暮らす夢も持ち続けた」

 昨年秋のことだ。ふたりは俊太郎さんの実家にいた。古い家だが、伶花さんはその家を気に入り、ふたりで少しずつ直してときどきそこで過ごしていたのだ。その日も、まるで夫婦のようにふたりはのんびりしていた。

「そこに彼女の夫の部下が踏み込んできたんです。どうやら妻に不信感を抱いた夫が浮気調査を依頼したみたいです。いつかこんな日が来ると思ったわと、伶花は『ごめんね。じゃあね』と手をひらひらさせて……。去り際に『あなたには迷惑がかからないようにする。約束するから安心して』とささやきました。夫のなだめ方を知っているんでしょう」

会えると信じています

 俊太郎さんはふぬけになった。伶花さんの夫は俊太郎さんを訴えたりはしなかったが、なんと奈緒さんに連絡して事の次第をぶちまけたようだ。もちろん、当人が出てきたわけではなく、俊太郎さんと奈緒さんが働く職場に郵便が届いたのだ。たくさんの写真なども同封されていた。

「どういうことと奈緒に言われて、言い訳はしないと答えました。奈緒は『職場にバラしてあなたを退職に追い込みたいのが本音だけど、そうなると養育費ももらえないもんね。異動届を出してよ、どこか遠くに』と言いました。ところがうちの会社、それほど遠いところに支社や営業所がないんですよ。それで僕は東京に異動を希望し、上司にこっそり本当のことを話して異動させてもらいました」

 今は実家にひとりで住んでいる。仕事内容ががらりと変わったこともあって、打ち込めない日々だという。今の上司には、「なんで君が東京に来たのかわからない」と言われる始末。

妻が怒っているのはわかっている。だから当然、離婚するのだと思っていたが、妻は離婚はしないと言い張っている。俊太郎さんは、自分の給与の半分を妻の口座に毎月振り込む。

「伶花とはあれきりです。仕事の関係者で社長夫妻のことを知っている人に、それとなく聞いてみたけど『あそこは相変わらず、社長が若い奥さんにぞっこんだから』と言っていました。表向き、変化はないみたいです。会えないのはつらいけど、僕にとって伶花は永遠の女神なんです。きっといつかまた会えると信じています。だから今、絶望はしていない。伶花も僕に会えると信じて日々を生きているはずですから」

 最後の部分は妄想かとも感じられるが、もしかしたら本当にそうかもしれないとも思わされる。男と女、目には見えない何かでつながっているかもしれないのだから。

「妻に、悪いと思ってないでしょうと怒られたんですよ。悪いと思っていたら、最初からそんな関係にはならない。僕は伶花とのどうにもならない運命を感じてしまっただけなんです。まあ、妻にはそうは言えなかったけど……」

 好きとか恋しているとか、そういうこととは次元が違うと彼は言った。友人には、オレの人生終わったと冗談めかして言っているが、実際にはそうは思っていないのだという。「これは運命、僕と伶花は離ればなれになってもまた会う運命」と彼はつぶやき、「もちろん、信じなくていいですよ。不倫した男の戯れ言です」と真顔になった。

前編【3歳で父と死に別れ、母は「妻子持ち」と駆け落ち…頑張れば報われると思うしかない家庭環境で育った、43歳男性の価値観が崩壊した瞬間とは】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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