なぜプロ野球の「外国人選手」は活躍できなくなったのか? 日米で大きく異なる「ストライクゾーン」がもたらす日本球界「ガラパゴス化」の危機

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「もうNPBで経験がない外国人バッターは獲れないよ」

 大きな期待を背負って今季新たにNPB球団に加わった外国人打者たちが、軒並み苦戦している。5球団との対戦が一巡した4月14日の試合終了時点で、打率30位以内に入ったのはセ・パを合わせて2人のみ。外国人打者が“助っ人”として機能しないのは近年の傾向だが、何が起こっているのだろうか?【中島大輔/スポーツライター】

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「うん、まあ、はい……」

 西武の松井稼頭央監督が4月14日のソフトバンク戦で5連敗を喫した後、返答に窮したのが昨季ヤンキースで24試合に出場した新外国人、フランチー・コルデロについて訊かれた直後だった。

 連敗ストップを懸けてホームでソフトバンクに対したこの日、0対1で迎えた6回二死一、二塁でレフトにフライが上がると、スライディングキャッチを試みた左翼手のコルデロはグローブに当てながらも後逸。記録は2点タイムリー三塁打となる痛恨のミスを犯した。打撃でも14試合で打率.176、1本塁打、リーグ最多タイの18三振と不振が続いている(今季の成績は4月14日試合終了時点、以下同)。

 14日の試合後、大量のバットやスパイクなど荷物をまとめて引き上げるコルデロの姿が目撃された。そして翌15日、登録抹消に至っている。

「もうNPBで経験がない外国人バッターは獲れないよ。あまりにもギャンブル性が強くて……」

 そう漏らしたのは、ある球団の幹部だ。実際、今季日本で初挑戦中の外国人選手は軒並み苦戦を強いられている。

マット・レイノルズ(広島)2試合/打率.000/0本塁打
ジェイク・シャイナー(広島)2試合/打率.200/0本塁打
クリスチャン・ロドリゲス(中日)6試合/打率.167/0本塁打
アレックス・ディカーソン(中日)1試合/打率.333/0本塁打
コーディ・トーマス(オリックス)二軍
ヘスス・アギラー(西武)14試合/打率.278/2本塁打
フランチー・コルデロ(西武)14試合/打率.176/1本塁打
アンドリュー・スティーブンソン(日本ハム)10試合/打率.125/0本塁打
フランミル・レイエス(日本ハム)11試合/打率.100/1本塁打

 広島のレイノルズ、シャイナーはいずれも2試合終了後に負傷、中日のディカーソンは1試合に出た翌日に腰痛を訴えて登録抹消となった。また、鳴り物入りで巨人に加入したルーグネッド・オドーアは調整のため開幕二軍を指示されると、拒否して退団に至っている。

トラッキングデータ導入による変化

 メジャーリーグに移籍した日本人選手が適応するのに一定の時間を要するのと同様、新外国人選手も同じ環境に置かれている。特に打者は、「200打席は与えないと実力を測れない」とも言われる。

 一方、阪神、DeNA、ヤクルト、ロッテ、ソフトバンク、楽天の6球団は今季、NPB経験を持たない新外国人打者を支配下で獲得していない。その理由について「ギャンブル性が強い」と前述の某球団幹部は説明したが、言葉の裏にあるのが日米で異なる“ストライクゾーン”の存在だ。

「日本のストライクゾーンは内外角と低めが広すぎる。一方で、アメリカと違って高めはストライクにとらないからね」(前述の某球団幹部)

 実際に昨季、メジャーリーグから西武にやって来たデビッド・マキノン(現在は韓国のサムスン・ライオンズ)も同じようなことを話していた。

 本来、ストライクゾーンは公認野球規則(Official Baseball Rules)で明確に定められているものだ。

<打者の肩の上部とユニホームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである>

 それでも球審が判定する以上、ある程度の個人差はどうしても生まれるだろう。

 だからこそ近年、アメリカではストライクゾーンを一定にするような施策がとられている。MLB球団のあるスカウトが説明する。

「以前はアメリカでも個々の球審の裁量に委ねられていたんです。ところがトラッキングデータ(ボールを自動追跡するカメラによるデータ)の導入が進み、テレビ中継でもストライクゾーンが白枠で画面上に示されるようになりました。枠(=ストライクゾーン)の大きさは選手の身長ごとに変わります。判定を間違えれば、今は視聴者にSNSで指摘される時代です。加えて、試合後に判定の正誤がすぐにデータで出るので、間違いが多いと球審は自分の評価を落とす。だから“正確”なストライクゾーンを間違えないように判定することが求められ、精度がものすごく高まりました」

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