なぜプロ野球の「外国人選手」は活躍できなくなったのか? 日米で大きく異なる「ストライクゾーン」がもたらす日本球界「ガラパゴス化」の危機

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3Aの試合では「ロボット審判」も

 さらに、3Aの環境はもっと変化している。人間が球審を務めるのではなく、機械が自動的にボール・ストライクを判定するシステム(ABS)、いわゆる「ロボット審判」が2023年には約半数の試合で採用されたのだ。

 反対に球審が判定する場合、1試合で各チームが計3回まで異議を申し立てることができる。その際には前述のABSで判定される。

「チャレンジ制度の導入により、ストライクゾーンが従来よりかなり小さくなりました。それが“打高投低”のトレンドに拍車をかけています。いずれも日本とは異なる流れです」(前述のMLB球団の某スカウト)

 近年の日本球界は極端な“投高打低”だ。昨年打率3割に達したのはセ・リーグで3人、パ・リーグでは2人しかいなかった。投手たちの球速アップや多彩な変化球の習得など進化が目覚ましい一方、内外角と低めに広いストライクゾーンが有利に働いていることも要因として考えられる。

 事実、日本のストライクゾーンは投手有利と話す新外国人がいる。昨季ヤンキースで45試合に登板し、今季西武に加入した右腕投手アルバート・アブレイユだ。

「日本のストライクゾーンはアメリカと少し違うね。少々広いように感じる。ピッチャーにとってより良い方向に働くと思う」

 日米のストライクゾーンは異なるため、アメリカで撮られた映像や、計測された数値をもとに日本で活躍できるかは予想しにくい。かつ、日本の投手たちは低めの変化球でバットに空を切らせる投球術に優れている。以上の理由により、NPBでの経験がない外国人打者の獲得を躊躇する球団が増えているのだ。

捕手が活用する「フレーミング」

 そうしたなか、打力アップが課題だったロッテは、今季開幕を前に、前DeNAのネフタリ・ソトを獲得。来日初年度の2018年から2年続けて本塁打王を獲得した右打者は、昨季109試合で打率.234、14本塁打と成績を落として退団した。だが、新天地では14試合でリーグ5位の打率.327、1本塁打と持ち前の打棒を取り戻している。

 加えてロッテのもう一人の外国人打者、グレゴリー・ポランコは2022年に巨人と契約して来日。翌年ロッテに加入すると、26本塁打で同タイトルを獲得した。今季は13試合でリーグ9位の打率.294、1本塁打と好発進している。

 また昨年オフ、ソフトバンクは元巨人のアダム・ウォーカーをトレードで獲得した。交換相手の一人となった右腕・高橋礼は、今季、巨人で先発ローテーションで回るほどの実力者だが、上記のような事情も考慮されているのだろう(※ソフトバンクは泉圭輔も放出する2対1のトレード)。

 さらに言えば、ソフトバンクは“狡猾”だ。正捕手の甲斐拓也は2022年オフから「フレーミング」と言われる捕球技術を、その道の名手として知られる緑川大陸氏から学んできた。ソフトバンクはその緑川氏を今季開幕前の春季キャンプにキャッチングコーディネーターとして招聘。捕手たちにフレーミングの実技講習が行われた。

 フレーミングは、簡潔に言うと<ストライクゾーンからギリギリ外れたボールをうまく内側に寄せながらストライクに見せる捕球法>で、近年、捕手にとって重要な技術とされる。事実、4月12、13日の西武戦で、甲斐は低めのボールをうまくフレーミングし、球審からストライクの判定を受けていた。ただでさえ広い低めのストライクゾーンを、ソフトバンクはさらにうまく使おうとしているわけだ。

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