「放火するぞ!」相次ぐ脅迫が… 話題の「トランスジェンダー本」に監訳者は「ヘイトではない」

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“店の倉庫から”

 例えば、都内の某大型書店では売り場のどこにも同書が見当たらない。店員に聞いてみると、

「ウチは脅迫を受けたわけではありませんが、大事をとってお客様から見えるところには置いておりません。問い合わせがあれば、店の倉庫から出してくることになっています」

 また、事前に脅迫を受けたという別の某大型書店の担当者によれば、

「取次から配本を受けた後、今月1日の会議で、店舗もオンラインも一律に販売を見合わせることにしました。お客様や従業員の安全を考えた末の決定です」

 むろん、通常通りに販売を行っている書店のほうが多く、今のところ放火は起きていない。とはいえ、脅迫を受けた当事者を中心に、身の危険を感じて販売を見合わせた書店がいくつも存在するのは事実だ。

「学術寄りのドキュメントで、ヘイトではない」

 同書の監訳を担当した精神科医で昭和大学特任教授の岩波明氏はこう述べる。

「この本は、アメリカで大勢の思春期の少女たちがホルモン治療や性転換手術を受けている現状に関して、丁寧に医療的な視点から描いた、学術寄りともいえる硬めのドキュメントです。当然ながらヘイトではありません。政治利用され、脅迫の対象になるのは誠に残念です」

 議論であれば大いに戦わせてしかるべきだが、自らと異なる意見を暴力で封じようとする脅迫は言語道断だ。一刻も早い事件の解決が待たれる。

週刊新潮 2024年4月18日号掲載

ワイド特集「厚顔無恥」より

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