「知り合いだけで10人ほどが指を落としている」 山崎製パンの“ブラックすぎる”労働環境とは…「死亡事故も頻発」

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国内シェア4割を誇るガリバー企業

 1月9日、総売り上げ1兆円超のヤマザキグループを率いる飯島延浩・山崎製パン社長の次男で社長候補だった佐知彦副社長が謎の急死。2月24日には千葉工場で死亡事故が発生した。悲劇の裏には何があったのか――「パン業界のガリバー」の書かれざる正体。【前後編の前編】

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 目下、山崎製パンは「春のパンまつり」キャンペーンの真っ最中である。対象の商品についてくる点数シールを集めると必ずもらえる、あの白い皿やボウルが自宅にある、という方も多かろう。また、「春のパンまつり」に応募したことはなくとも、多くの人が同社の食パンや菓子パンを一度は口にしたことがあるに違いない。山崎製パンはわれわれ日本人にとって、極めて身近な会社である。

 ヤマザキグループ連結での2023年12月期の売り上げは1兆1756億円、従業員数は山崎製パンだけで約1万9000人。業界2位以下の10社の売上高を全て足しても及ばない、国内シェア4割を誇る、パン業界の「ガリバー」企業だ。

 1948年、創業者・飯島藤十郎氏が千葉県市川市に山崎製パン所を開業したのが起源。現在、社長を務める飯島延浩氏(82)は3代目だ。

「ロイヤルブレッド」などの食パンや「まるごとソーセージ」といった総菜パン、和菓子や洋菓子を自社で作って売るだけではなく、「流通」までグループ会社でまかなうのが同社の特徴の一つである。白地に黒色の「ヤマザキ」の文字が躍り、外国人風の女の子がパンをかじるイラストと、太陽のモチーフのシンボルマークが描かれたトラックが日々、全国各地にある工場から、コンビニやスーパーまで商品を運んでいる。

死亡事故を発表せず

 そうした独自の物流網を生かし、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大きな災害が起こった際、被災地にいち早く支援物資としてパンを届けて称賛を集めてきたのも今や広く知られる話だ。今年元日の能登半島地震の際も、自衛隊員たちが山崎製パンのトラックからパンを運び出す様子がSNSにアップされて話題を呼んだ。

 こうした“美談”の上、テレビCMには清廉なイメージのある女優の松たか子や芦田愛菜らが起用されているのだから、ヤマザキの企業イメージは悪くなろうはずもない。目に見える部分に限ると、「超のつくホワイト企業」といったイメージを抱いてしまうのではないか。

 しかし、光あるところには当然、影もある。それを象徴するような事故が起こったのは、去る2月24日のことだった。千葉市内にある山崎製パン千葉工場において、アルバイトの加藤静江さん(61)がベルトコンベアーに巻き込まれて死亡したのである。

「加藤さんは菓子類の製造作業中にベルトコンベアーに巻き込まれ、胸を強く圧迫されたとみられています。午前10時20分ごろ“女性がベルトコンベアーに挟まれ、意識がない”と工場の関係者から119番があり、病院に搬送されましたが死亡が確認されました」(全国紙社会部デスク)

 ちなみにこの事故は一部の新聞などが報じたことで発覚。山崎製パンは今にいたるまで事故に関して何ら発表していない。

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