中国のスパイドローンが「護衛艦いずも」を撮影? SNSで拡散する動画に専門家は「飛行甲板に注目すべき」

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 Xに「いずも ドローン」と入力して検索すると、空母を連想させる軍艦が映った動画が表示されるはずだ。軍港に停泊している軍艦に向かってカメラは急接近し、そのまま甲板の上を飛行していく──。この動画、中国の動画共有サービス『Bilibili』に掲載されたと言われており、その衝撃的な内容から、日本のSNSでも拡散を続けている。

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 ちなみにbilibiliにアップされた動画は、既に削除されたという。つまり現在、XなどのSNSにアップされているのはコピー動画の可能性が高いわけだ。担当記者が言う。

「ネット上で拡散している動画には説明文が付いており、この船は海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦『いずも』で、動画はドローンを使って撮影されたと書かれています。中国でも話題になりましたが、日本のネット上ではフェイク動画説と本物説が入り乱れ、激しい議論が起きています。木原稔防衛相と海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は、それぞれ2日に会見を開き、木原防衛相は『悪意をもって加工、捏造(ねつぞう)されたものである可能性を含め、現在分析中』と説明。酒井海上幕僚長は『不自然な点はあると思うが判断しかねる』と明確な回答を避けました」

 もし本物の動画であると明らかになれば、「護衛艦いずもの防空システムは大丈夫なのか!?」と疑問の声が噴出するのは確実だろう。軍事ジャーナリストは「私も動画を見ましたが、フェイク動画の可能性が高いと思います」と言う。

「まず、報道に至るまでの経緯が重要でしょう。ドローンを操縦したことがある人ならご存知だと思いますが、飛行時は結構な音がします。あの動画が実際に撮影されたものなら、いずもの乗組員や基地の隊員は音などの異変に気づいたはずです。さらに航空法違反は明確ですし、海上自衛隊の護衛艦の上を飛んだという事実は看過できませんから、海自か神奈川県警がドローンの飛来を広報し、それを日本のメディアが報じたはずです」

飛行甲板の違和感

 ところが今回の動画は中国で話題になり、その反響を知った日本の民放キー局などがニュースで伝えた。要するに報道が先行したのだ。

「本当にドローンが護衛艦の上を飛んだのなら、日本発のニュースになったのではないでしょうか。中国発のニュースという時点で、ドローンの飛行を疑う根拠になるはずです。誰かがフェイク動画を作成し、それを中国の動画サービスにアップしたからこそ、先に中国で話題になった。そして、それを日本のメディアが気づき、防衛省に取材申請するなどして記事を配信したわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ネット上では旗が風にはためく方向や、艦番号のペイントのかすれ具合、はたまた周辺の建築物の様子など、動画の非常に細かな点までが議論の対象となり、本物説とニセモノ説が拮抗している。

「私が注目したいのは飛行甲板です。実際の甲板は、もう少し汚れています。動画の甲板は耐熱塗装処理後の雰囲気が感じられず、F35B離発着用の黄色の滑走路標示線も、ちょっと綺麗すぎるのではないでしょうか。甲板に乗組員の姿が全く映っていないのも疑問です。もし本当にドローンが撮影したのであれば、少なくとも1人か2人の乗組員がドローンに気づく様子が納められたはずです」(同・軍事ジャーナリスト)

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