人も企業も惹きつけるテキサス州が独立? アメリカ政治の動向は「一寸先は闇」

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人も企業も惹きつけるテキサス州

 カリフォルニア州とニューヨーク市が大きな損失を被っているのを尻目に、その恩恵に浴しているのはテキサス州だ。2020年2月以降、雇用者数が約100万人増加した。

 税金が低く、住宅価格も手頃なテキサス州に多くの企業が引き寄せられている。2010~19年の10年間でテキサス州に移転した企業数は2万5000社以上に上った(2月16日付Forbes JAPAN)。

 広大な面積を誇るテキサス州には企業移転の候補地がたくさんあることから、この傾向は今後も続くとされている。

 テキサス州はこのところ連邦政府に対する反発を強めている。移民の大量流入に危機感を抱いてしばしば強硬な手段を講じているが、人権を重んじる連邦政府がそのたびに「待った」をかけてくるからだ。

 移民問題は大統領選挙の最も重要な争点の1つであり、今後、テキサス州と連邦政府の間の対立は一層激化することだろう。

テキサス州が独立する?

 1836年から9年間、「共和国」だった歴史を有するテキサス州の人々は、米国の中で最も独立志向が強いと言われている。経済が絶好調なことを追い風に「合衆国を離脱すべきだ」との声が近年になく高まっているようだ。活動の中心にいるテキサス・ナショナリストたちは「30年以内に独立する可能性は100%だ」と鼻息が荒い(3月24日付ニューズウィーク日本版)。

 万が一、テキサス州が米国から離脱することになれば、南北戦争のきっかけとなった南部11州の離脱以来の出来事だ。米国全体が再び内戦に突入する可能性は排除できない。

 現時点でテキサス州が離脱する可能性は低いだろうが、気になるのはCNNに掲載された「米国は新たな内戦の瀬戸際にあるのか 」と題するオピニオン記事(英語版は3月16日付、日本語翻訳版は3月25日付)だ。

 外交問題評議会(CFR)のシニアフェローでジョージタウン大教授のブルース・ホフマン氏と同リサーチフェローでジョージタウン大・デセールス大非常勤教授のジェーコブ・ウェア氏によるこの記事は、内戦のリスクを指摘する有識者たちの主張を紹介した上で、「米国が実際の内戦を回避できたとしても、政治的暴力が相次ぎ、政府は市民を守る能力を失ってしまう。米国の安定は損なわれてしまうだろう」と悲観的だ。

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