「岸田退陣の引き金」となる“大逆風”下の島根1区補選 自民支持者もサボタージュ…「自民の牙城」で進行する“ステルス”保守分裂選挙

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 岸田政権の「浮沈」を決める衆院3補選の投開票日(4月28日)まで1カ月を切った。なかでも「唯一の与野党一騎打ち」になる見通しの島根1区補選の現場でいま、かつてない自民党への逆風が吹き荒れているという。全国屈指の「自民王国」で起きている前代未聞の“保守分裂”騒動の真相とは。

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 島根1区補選は細田博之・前衆院議長の死去に伴うもので、本来であれば「弔い合戦」となり、自民にとって“勝って当たり前”の選挙のはずだった。ところが、そんな楽観論を抱いている党関係者は「皆無だ」と話すのは、全国紙政治部記者である。

「3補選のうち、東京15区と長崎3区で自民は候補者の擁立に向けた対応が定まらず、島根1区が事実上の天王山になる見込みです。実際、岸田首相に近い党関係者は『島根で負けたら“全敗”と同じ。“岸田おろし”が一気に始まって、政権が持たなくなる』と危機感を募らせている。岸田首相も今後、現地入りして“巻き返しを図る”意欲を周囲に語っています」

 自民がここまで焦るのは、事前の情勢調査で「衝撃の数字」が出たためという。

「野党第一党の立憲民主党は亀井亜紀子・前衆院議員(58)を擁立しましたが、共産党が候補者擁立を見送り、国民民主党県連も『亀井支援』の方針を打ち出したため、野党候補は亀井氏に一本化されました。対する自民党は新人で元財務官寮の錦織功政氏(54)を立てて迎え撃つ立場ですが、事前の自民の情勢調査で亀井氏が12~13ポイント差でリードしていると伝えられます。立民調査でも亀井氏が10ポイント近くリードしているとされ、『保守王国』の島根でこの数字は異常。自民党幹部の顔が青ざめるのも無理はありません」(同)

集会場は閑散

 島根はこれまで細田氏が当選11回を重ねるなど、「自民の牙城」として知られた土地だ。しかし竹下登元首相の実弟・竹下亘氏や「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄氏などが相次いで亡くなったことで、自民の威光に“陰り”も。実際、19年の知事選では「44年ぶりとなる保守分裂選挙」となり、自民党に激震を走らせた。

「逆風の背景にあるのが、収束の気配が見えない自民派閥の裏金事件など『政治とカネ』をめぐる問題です。さらに細田氏自身、裏金事件の震源地である清和政策研究会(安倍派)の会長を務めていたことも有権者の視線を厳しくし、“弔い”気運が盛り上がらない要因になっている」(同)

 地元の自民党関係者が「想像以上に悲惨」な現地の様子について、こう明かす。

「錦織さんは実直でスマートな人柄で好感は持てますが、いかんせん知名度や華がないため、逆風を跳ね返すどころか“埋没”してしまっている。幹雄氏の長男で“後ろ盾”となっている青木一彦・参院議員とともに精力的に集会などを開き、支援を呼びかけていますが、会場の半分程度しか聴衆が埋まらないケースも珍しくない。質疑応答の段になっても手を上げる参加者がいないなど寂しい光景を目にして、『無所属で出るべきだった』との恨み節が陣営内から上がっている」

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