「百害あって一利なし」インド・モディ首相はなぜヒンズー国家政策をゴリ押しするのか

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中国に代わる投資先として台頭

 インドの経済成長がさらに加速している。

 昨年第4四半期の経済成長率は前年比8.4%増と第3四半期の8.1%増を上回った。インド準備銀行(中央銀行)は「今年度(3月31日まで)の経済成長率は8%に極めて近い水準になる」との見通しを示している。

 グローバル企業が「脱中国」を目指す中、インドは世界の生産拠点になりつつある。

 海外投資家の間でインド経済の先行きを期待する見方が広がっていることから、同国の製造業分野における投資ラッシュが起きている。海外からの投資をさらに促進するため、インド政府は総額150億ドル規模のインフラ事業を実施する構えだ。

 インド政府は2月29日、同国における3件の半導体工場の設立を承認した。地場大手タタ財閥系やルネサスエレクトロニクスによる設立で、投資額の合計は1兆2560億ルピー(約2兆2000億円)に達している。

 自動車分野でも投資が相次いでおり、インドのゴヤル商工相は3月15日、「同国は電気自動車(EV)の世界的な製造拠点になる」と自信のほどを示した。

 企業の新規株式公開(IPO)も活発だ。昨年の主要取引所への上場企業数は世界最多となり、中国に代わる投資先として、海外からの資金流入が続いている(3月19日付日本経済新聞)。

モディ政権下で一段と拡大した格差

 経済が絶好調に見えるインドだが、「不都合な真実」も明らかになっている。

 フランスの民間シンクタンク「世界不平等研究所」の報告書によれば、昨年末の時点で、人口の約1%にあたる最上位層(超富裕層)の資産がインド全体の資産の40.1%に達し、1961年以降で最も大きくなった。

 同研究所はさらに「2期続いたモディ政権下で格差が一段と拡大し、富の集中度は今やブラジルや米国を上回っている。インドは植民地時代よりも格差が広がった」と指摘している。インドの野党は長年、モディ政権下の縁故資本主義(政府との契約で特定の企業を優遇)を批判してきたが、その主張が正しかったというわけだ。

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