能登地震 「周囲は『案外大丈夫なんだ』と思っているかもしれないが…」妻子4人亡くした警察官(42)の消えぬ後悔

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頑張って生きていこう

 家族や恋人などを失った人がよく「自分も死んで天国で会いたい」と語ることがある。敢えて問うてみた。

 しかし、圭介さんは「妻や子どもに会いたいけど、死んだら会えるかどうかもわからないので……。それより彼らがもっと生きたかった分も僕が頑張って生きていこうと思うんです。妻や子どもたちは僕のことを見ていると思って」と語る。どこまでも前向きだった。

 さらに、圭介さんは「一生懸命生きた妻や子どもたちのことを世間の人に知ってもらいたい」と話していた。取材はそれに甘えた形でしかない。

 あの日、最初の揺れですぐに出勤しようとした圭介さんは上司に招集されたわけではない。「救助を求める人が出るかもしれない。1人でも助けなくては」という、珠洲警察署の警備課長としての強い使命感からだった。

「すぐに家族らを家から出すべきだった」という圭介さんの後悔は今後も消えることはないのかもしれない。だがはる香さんと3人の愛児は天国で今、あの日の圭介さんの行動に「やっぱりお父さんは立派だったんだね」と拍手を送っているだろう。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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