甲子園優勝4回の名将「門馬敬治」が再び聖地へ 創志学園が初戦突破、プロ野球の上位クラスに匹敵する“スピード”を披露!

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“Aggressive Baseball”

“名将”が再び甲子園に帰ってきた――。それは、3月20日に行われた選抜高校野球大会第3日に登場した創志学園(岡山)の門馬敬治監督のことである。東海大相模では春3回、夏1回チームを甲子園優勝に導くなど一時代を築いた。春夏の甲子園での通算成績(今大会は含まず)は30勝7敗で勝率は.811。これは30勝以上を記録している監督の17人の中でも中村順司氏(元PL学園監督)の.853、西谷浩一監督(大阪桐蔭)の.838に次ぐ3番目の数字である。【西尾典文/野球ライター】

 門馬監督が東海大相模の監督を退任したのは2021年7月。直前の選抜で優勝を果たしていた直後だっただけに関係者の間でも驚きの声が多かったが、約1年後の2022年8月には創志学園の監督に就任。それからわずかの期間でチームを鍛え上げ、昨秋の中国大会で準優勝を果たしている。

 そんな門馬監督が東海大相模時代から掲げているスローガンが“Aggressive Baseball”だ。攻撃では相手の隙を見逃さずに常に次の塁を狙い、守備でも相手打線にプレッシャーをかけ続ける。そんな姿勢が、この日の別海(北海道)との試合でも随所に見られた。

 2回の攻撃ではワンアウトからヒットで出塁した秦知也(新3年)がすかさず二盗、三盗を成功。続く矢野勇人(新3年)のスクイズはピッチャーフライで併殺となり、無得点に終わったものの、積極的な姿勢を強く印象付けた。

 4回には5番の賀陽瑛史(新3年)が相手ショートのエラーで出塁し、秦の犠牲フライで1点を先制。結果だけを見ればラッキーな得点に見えるかもしれないが、その裏には創志学園の誇る大きな武器が関係している。

一塁到達タイムはダントツの数字

 それが打者の全力疾走する意識の高さだ。一塁到達タイムは4.30秒を切れば水準以上で、4.00秒を切ればプロ野球でも上位のスピードと言われるが、賀陽のショートゴロエラーでのタイムは3.93秒をマークしている。

 また、この試合を通じて4.30秒を切ったケースは7度あり、これはここまでに登場したチームの中でもダントツの数字である。別海も昨秋の公式戦6試合で失策は5と決して守備が悪いチームではないが、この試合では5失策を喫しており、創志学園の足のプレッシャーに飲み込まれた部分は大きかったはずだ。

 5回にはヒットは1本ながら相手の野選や併殺崩れなどで3点、7回は3安打を集中して2点を追加。さらに8回は、ツーアウト一・三塁からセーフティスクイズ(記録は捕手への内野安打)を成功させ、ダメ押しの1点を奪っている。先発したエースの山口瑛太(新3年)も別海打線を寄せ付けずに被安打4、14奪三振で完封。終わってみれば7対0という完勝だった。

 しかし、試合後に会見場に姿を現した門馬監督から多く聞かれたのは、快勝に対する満足よりも、多くの反省点だった。創志学園での初勝利については「格別です」と答えたものの、その後はこう続けている。

「自分の緊張が選手に伝わったのか、最初は選手も全く動かなかったです。だから何とかして動かそうということで盗塁もしかけましたが、スクイズの失敗もありました。中盤から徐々に良くなりましたけど、まだまだです。(完封の山口については)ナイスピッチングでしたが、もっといいボールを投げようとし過ぎて、制球が乱れる場面がありました。守備もエラーはありませんでしたけど、もっととれるアウトもあったと思います」

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