半数が留学生のケースも… 歯科大、歯学部で外国人が急増している理由

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 アルプスの山並に抱かれた長野県・塩尻市に松本歯科大学のキャンパスはある。歯学部の単科大学として発足した同大学は、ほぼ半世紀にわたって腕の良い歯科医師を全国に送り出してきた。ところが、近年、学生の顔ぶれに異変が起きているという。

「歯学部の定員は96名ですが、留学生が増えているのです。アジア人が多く、見た感じでは日本人との違いが分かりにくいのですが、4分の1から学年によっては半分近くが留学生だったりします」(事情を知る歯科医師)

 彼らのほとんどは卒業すると、日本の国家試験を受け、免許を取った上で帰国する。医師や歯科医師の免許は、日本国内でのみ有効なのかと思ったら、実はそうでもないのだ。

「たとえば歯学部卒業生の場合、国によっては国家試験を受けなおす必要があるなど条件が違いますが、日本の免許があれば中国や韓国、ベトナム、タイなど10カ国以上で、歯科医師として働くことができます」(同)

「日本の歯科技術は世界トップクラス」

 それにしても、なぜわざわざ日本に? ちなみに同大学の場合、卒業まで3000万円は必要である。

 そこで松本歯科大学に聞いてみると、

「留学生を受け入れるようになったのは2012年からで、日本の大学の歯学部では最も早かったと思います。学生はほとんどが韓国人と台湾人。コロナ禍や台湾での歯科医師免許の取得条件が厳しくなって最近は減り気味ですが、それでも当大学は留学生に人気だと思います」(広報担当者)

 日本では歯科医師が過剰といわれて久しいはず。

「いえ、韓国や台湾では逆に大学の歯学部が足りていないのが実情です。それもあってか歯科医師の社会的地位や収入も高く、医師と同じかそれ以上。加えて、日本の歯科技術が世界的にトップクラスというのもある。だから、学生さんは医師や歯科医の子女が多いです」

 今では留学希望者のために、同大学は台北や上海、ソウルで“現地入試”まで行っている。先述の歯科医師が言う。

「留学生が増えているのは松本歯科大に限ったことではありません。他にも神奈川歯科大、国立大の九州大学や東北大学でも歯学部への留学生が増えているのが実情です」

 一時、歯科医師希望者が減ってしまい、定員割れが起きたこともある日本の歯学部。インバウンド景気がここでも起きている。

週刊新潮 2024年3月21日号掲載

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