薬剤師が語る「花粉症に本当に効く薬」 季節性アレルギー専用商品がポイント… 「医療用でなく市販薬の有効活用」

ドクター新潮 ライフ

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薬剤師も消費者が選ぶ時代

 これまでの話を踏まえた上で、ドラッグストアに行ってご自身で市販薬を選ぶことができればいいのですが、そう言われてもやっぱり薬選びに迷うという人は、ぜひ、ドラッグストアにいる薬剤師や登録販売者に相談してください。例えば、薬のパッケージには「血管収縮剤」とは書かれておらず、成分名で書かれているため、一般の方が見極めるのは難しいからです。その時は、「症状」だけではなく、「どうしたいか」も伝えるのがポイントです。

 一概に花粉症といっても、約3カ月続く花粉シーズンを楽に乗り切りたいのか、それとも今この瞬間の症状を何とかしたいのか、その人の希望によって勧める薬が変わってくることは、ここまで説明してきた話からお分かりいただけると思います。

 いずれにしても、よほど偏屈な薬剤師でなければ、実は多くの薬剤師は質問されるのを心待ちにしています。なにしろ、そのために薬学を勉強してきたのですから。もし、相談してもまともに対応してもらえなければ、その薬剤師がいるドラッグストアで薬を買うのをやめてもいい。ドラッグストアは1軒だけではありません。気に入らない薬剤師がいるドラッグストアで薬を買う義理はありません。薬だけでなく、薬剤師も、消費者であるみなさんが選ぶ時代だと思うのです。

ステロイド点鼻薬が効かない場合…

 こうして花粉症の市販薬に関する基本的な知識を得た上で、薬剤師も選別しつつ、薬を使用した。それなのに、満足できるほど症状が治まらないという人もいることでしょう。例えばステロイド点鼻薬が効かない場合、どういった原因が考えられるのか。

 まず、ステロイド点鼻薬をずっと使っていると効かなくなるというのは誤解で、むしろ花粉が飛んでいるシーズンを通して使うことが推奨されていますので、「使い過ぎ」で効かなくなるということはありません。

 次に、去年買って効いた市販薬をとっておき、今年も使っているのに効かないという人は、保管方法が悪くて薬の質が落ちてしまっているか、あるいは使い慣れたことで自己流の使い方になってきて、正しく鼻に噴霧できていない可能性も考えられます。

 さらには、本来は効果的なはずのステロイド点鼻薬が効かないということは、そもそも「花粉症ではない」可能性も考えられます。そうだとしたら、いくら季節性アレルギー専用の市販薬を使ったとしても効くはずがありません。そうしたケースでは、医師に診てもらう必要があります。言わずもがな、市販薬が万能というわけではありません。

 たかが市販薬、されど市販薬。上手に活用することで、花粉が猛威を振るうこの春の生活はだいぶ違ったものになるはずです。

児島悠史(こじまゆうし)
薬剤師、薬学修士。1986年生まれ。京都薬科大学大学院修了。ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」で科学的根拠に基づいた医療薬学情報を発信し、専門誌などにも寄稿。『ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます』『OTC医薬品の比較と使い分け』(いずれも羊土社)の著書がある。

週刊新潮 2024年3月14日号掲載

特別読物「病院に行かなくても『市販薬』で抑えられる “最効”の花粉症薬」より

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