満期出所した「雨イジングスパイダーマン」が「被拘禁者をサポートしたい」と話すワケ… 逮捕時に“Twitterでトレンド入り”「ネカフェ暮らし」「家なし・仕事なし」の過酷な現実

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 雨の日に姿をあらわし、ビルからビルへ飛び移って「盗み」を繰り返す手口から、付いた呼び名が「雨イジングスパイダーマン」――。その「犯人」として逮捕された人物が、収監先の刑務所を満期出所した。“シャバ”に戻るまでの波乱に満ちた経緯と出所後の過酷な現実について、本人が初めて口を開いた。

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「昨年12月9日に府中刑務所を満期出所しました。出所後は静養を兼ねて、実家のある大阪に身を寄せ、今後の人生について真剣に考えました。実は収監されていた時から“出所後は被拘禁者の支援活動をする”と決めていたので、今年2月、東京に出てきてその活動基盤づくりに奔走する日々です。ただ“雨イジングスパイダーマン”としての逮捕歴があるため、これまで家を借りようと20軒近くの不動産会社に申し込みましたが、すべて却下される状態が続いています」

 こう語るのは2019年11月、「雨イジングスパイダーマン」として逮捕された堀口裕貴(31)氏だ。逮捕されて以降、4年にわたり“塀の中”での生活を送ってきたという堀口氏が続ける。

「家が借りられないので、現在はネットカフェやビジネスホテルを泊まり歩く日々です。蓄えが十分にあるわけでなく、また住居を確保しないことには支援活動の拠点もつくれず、焦燥に駆られる日も少なくありません。当時、事件はテレビなどで繰り返し報道され、Twitter(現X)でもトレンド入り。そのため、いまでもネット上で私は『雨イジングスパイダーマン』として紹介されています。不動産会社によると、“物件のオーナーが私の名前を検索すると必ず事件のことが出てくる”ため部屋を借りられないそうです」(堀口氏)

 当時はSNS上での罵詈雑言も激しく、自身に関するネガティブな情報はいまでも検索すれば、カンタンに目にすることができる環境にあるという。

留置所に140日

 当時の新聞記事は事件を次のように報じていた。

〈新宿のビルに侵入して現金を盗んだとして、新宿署は(中略)堀口裕貴容疑者(26)を建造物侵入と窃盗の容疑で逮捕したと発表した。雨の日に建物を飛び移って盗みを繰り返していたとみられ、同署は「アメ(雨)イジング スパイダーマン」と呼んで捜査していた〉(『読売新聞』2019年11月3日付)

 同記事には〈周辺では4~10月、ビルの高層階を狙った窃盗事件が約20件発生しており、同署が関連を調べている〉として、余罪についても含みを持たせていた。

「逮捕後、刑事からも“犯行は10数件にのぼり、すべての現場からお前の指紋が出ている”と言われました。ただ私が起訴されたのは未遂を含めた3件のみで、被害総額は現金約12万円。少額な窃盗事件にもかかわらず、4年もの間“拘禁”されることになったのは、私が一貫して容疑を否認していたためです。本当に身に覚えのないことだったので無実を訴え続け、最高裁まで争いましたが、結果は棄却。否認事案として、新宿署の留置所に約140日、東京拘置所に3年強、そして府中刑務所には未決勾留分を差し引いた半年間、服役することになりました」

 司法によって「雨イジングスパイダーマン」と認定されている現実については本人も認めるが、「冤罪」であることは今後も訴え続けていくという堀口氏。それにはこんな事情があるという。

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